コロナ禍のホームレスはどう過ごしているのか 経済面の影響小さくなく今後の感染リスク懸念

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やはり、コロナ禍の影響で仕事が思うように見つからないそうだ。かなり追い込まれた状況に追い込まれているし、今後もよくなる見通しがないと顔色を曇らせていた。

取材をした結果、新型コロナ禍のホームレスに対する影響は、パッと見て、病気に罹患することよりも、経済面のほうが大きかった。

ただし今後はわからない。

赤痢や結核で亡くなるホームレスもいる

例えば大阪の簡易宿泊施設が密集する、あいりん地区では現在でも結核や赤痢の感染者が出ている。

僕がホームレスの取材を始めた、20世紀末においてすでに結核、赤痢は過去の病気だと思っていた。話を聞くために、西成の警察署を訪れた際

「今すごく赤痢がはやってるから、手洗いはしっかりしてください。あと、路上で覚醒剤とか売ってますけど買わんようにしてくださいね」

と当たり前のように注意されて、頭を殴られたくらいにショックを受けたのを覚えている。今もなお簡易宿泊施設で亡くなっていた人を検査すると、結核が発見されたりする。

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新型コロナは日本での感染拡大が今は収まってきてはいるが、第2波に警戒せねばならないし、決定的な治療薬は見つかっていない。簡単に根絶やしにできるわけではないから、いつかホームレスや貧困層を中心に感染が広がる可能性は大いにあると思う。

彼らの多くは高齢であり、栄養状態も悪く、かつ医療を受けられない、または医療を受ける気がない人が多い。おそらく新型コロナが発症したとしても、ほとんどの人は病院に行かないだろう。最悪亡くなってしまう人も現れるだろうし、感染したまま歩き回り本人が感染源になる場合もあるかもしれない。

特効薬が開発されるなどして一般的には恐ろしい病気でなくなった後にも、医療を受けない層はずっと尾を引き死者を出し続ける可能性もある。

ホームレスにとっても「新型コロナ」は恒常的な警戒と対策が求められる。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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