橋の上からテント村を確認すると、無残にもほとんどの建物がバラバラになっていた。長年取材をしてきた僕にとっては、かなり衝撃的な光景だった。
僕が呆気にとられていると、自転車で老人男性がやってきて崩壊したテント村を見て笑い出した。
「こいつら、バチが当たったの。一級河川に勝手に住んで!! 全然かわいそうじゃないぞ!! ざまあみろだ!!」
と叫んでいた。
僕は呆気にとられつつも、話を聞いてみると、彼は近所に住んでおり、河川敷で生活している人たちが常々気に入らなかったという。だから、台風一過を狙ってわざわざ自転車で惨状を確認しにきたのだと老人は語った。
野宿生活をしている人たちが家を失ったのを見て笑っている姿を見て、どうにもやりきれない気持ちになった。
ただ小屋を流された人は、めげずにすぐに影響が少なかった堤防の高い位置などに即席のテントを張っていた。数日後に訪れると、あちこちに小さいテントが建っていた。
そして今回、5月中旬に多摩川の河川敷を訪れた。昨年の台風19号襲来の後は水に流されて池のようになっていたが、河川敷内にあるゴルフ場はすっかり元どおりになっていた。コロナ禍でヒマを持て余した人たちが集まって、打ちっぱなしを楽しんでいた。
ホームレスのテント村だった場所はそのまま放置
ただしホームレスのテント村だった場所は、流された状況そのままに放置されていた。小屋は破壊され泥をかぶって住むどころではなかった。住んでいる人は、1人もいないようだった。暖かくなってきていたので、腐臭が漂い、カやハエなどの虫がたくさん飛んでいた。
河川に沿って、いくつもあった小屋もすべて壊れてしまい、再び人が住んでいるところは数えるほどしかなかった。
10年ほど前から河川敷で野宿をしていたという男性に話を聞くと、
「台風後に、とくに立ち退いてくれとかは言われてないけど、かなり減ったね。自主的に福祉(生活保護)をもらってアパート暮らしを始めた人が多いね」
とのことだった。
河川敷に建てられた小屋は、しっかりと建てられているものが多かった。かなり労力もかかっている。それが流されてしまったら、精神的に参ってしまうだろう。
男性は少し残念そうに語ったが、ただもちろん悪いことではない。生活保護を受けながらアパート生活をすることで、医療機関を受診できるようになり、無頼漢から暴力を受ける可能性は大いに減る。再出発のチャンスも、野宿生活をしているよりは大きいだろう。
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