コロナ禍が収まった後には、今よりは求人は増えると思うが、それでも全員が求職はできないだろう。ホームレスの平均年齢は61.5歳(2016年、厚生労働省調査)で、若い人よりも仕事は限られてしまう。
そもそもホームレスをしていると、住所や電話番号を持てなかったり、心身を身綺麗に保つことが困難になったり、新たな再就職先を見つけたりするのが難しくなる。負のスパイラルに陥ってしまうと、はい上がることが困難になる。
話を聞かせてもらったお礼に、サージカルマスクを渡すと非常に喜ばれた。
「マスク欲しかったけど手に入らなかったんだよ!! マスクつけてないと白い目で見られるしね。ありがとう、ありがとう」
と何度も頭を下げられた。
今回の取材では、新型コロナ禍でホームレスになったという人はほかにはいなかったが、これからも住処を失って河川敷に人が来ることはありそうだった。
炊き出しの数は少なくなっている
続いて、隅田川周辺で行われた炊き出しの様子を見に行った。ボランティアが開催している定期的な炊き出しだが、かなり大勢の人が集まっていた。
コロナ禍になって特別並ぶ人が増えたわけではないが、炊き出しの数自体は総体的に少なくなっているという。
炊き出しを作るにも、配るにも、人が大勢集まることは避けられず、ソーシャルディスタンスが保てなくなるため仕方がないだろう。僕が顔を出した会でも、手渡しをする際に一定の距離を取るなど、配慮に苦労しているようだった。
炊き出しに並んでいるのはホームレスだけではない。一見して20~30代とわかる若い男性の姿も目についた。プラスチックケースに入った炊き出しを受け取った後、顔見知り同士で情報交換していたが皆浮かぬ顔だった。
話を聞いた70代の男性は、
「公園の清掃の仕事は月に10回はもらえていたんだけどな。今は公園も封鎖されてやっていないだろ? だから先月も今月も1度ももらえてないな」
と語っていた。これらは特別清掃と呼ばれる公共の仕事(高齢者特別就労事業)なのだが、高齢者ホームレスの中には、この仕事が生命線となっている人も多い。
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