岐阜市の路上で今年3月、ホームレスの80代男性が襲撃されて死亡した事件で、岐阜地検は5月15日、殺人容疑で逮捕された3人のうち1人を傷害致死罪で起訴、残る2人の少年を傷害致死の疑いで岐阜家裁に送致した。
この事件では朝日大学の現役硬式野球部員2人を含む少年5人が逮捕された。被害にあったのは橋の下に住んでいた81歳のホームレスで、アルミ缶回収で生計を立てていた。収入のほとんどを捨て猫の餌代に費やすという、心優しいホームレスだったと伝えられている。
僕は20年にわたり、ホームレスの取材を続けている。このような話は、聞き込みをしているときによく耳にした。むしろ野宿生活をしていて一度も暴力を受けたことがない人のほうが珍しい。
今回は殺人に至ってしまったので報道されたが、未成年によるホームレス襲撃は“よくある話”なのだ。
拙著『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)から未成年、少年・少女によるホームレスへの襲撃事件を取り上げた部分を一部公開したい。
ホームレスより怖い中高生
ホームレスについて、「汚い」「臭い」というイメージを持っている人も多いが、より漠然と「ホームレスは怖い」と思っている人もいる。とりわけ、女性には多いかもしれない。先述したとおり、そもそもホームレスはほぼ男性だ。加えて、周りに誰もいないのに怒鳴り散らしていたり、突然奇声を発したり、不衛生にしてゴミを散らかしていたりなど一般人に迷惑をかけるホームレスも一部いるので、怖いと思われているのはある種、仕方がない。
ただ、ホームレスに話を聞く身からすると、一般人のほうが怖いと思うことがある。
「中学生らしき集団に花火を打ち込まれた」
「身体やテントに火をつけられた」
「酔っ払ったサラリーマンに蹴り飛ばされた」
「自転車を投げつけられた」
このような未成年や酔っ払いを代表とする一般人によるホームレスへの暴力話には枚挙にいとまがない。生活実態調査では、14.7%のホームレスが
「ホームレス以外の人にいやがらせを受けて困っている」
と回答している。
ホームレスへの暴力事件については、1980年代初頭に起こった横浜浮浪者襲撃殺人事件が有名だ。横浜市内の公園や地下街でホームレスが次々襲撃されたのだ。犯人は、市内にある中学校生徒を母体とした未成年の不良グループ「恐舞連合」。同じく市内を拠点とする不良グループ「中華連合」とけんかして負けたことから、けんかの練習台としてホームレスに目をつけた。
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