ホームレスを襲う未成年の理不尽すぎる暴力 1980年代から今まで断続的に起こっている

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こういった凶悪事件が起こるため、ひとりでいると暴力を受けやすいということから、 ホームレスたちは河川敷でも集落を作って生活する。もちろん「ここに、集まって村を作ろう!」と宣言して、人が集まってきたわけではない。ただ結果的に、村としか呼べないくらい小屋が密集した場所になる。集団で暮らせば、助け合うこともできるので、ひとりで生活するより楽になることもある。

ただし、村社会になると村人同士のけんかが発生することが世の常だ。酔っ払って思わず手が出たくらいの話もあるが、刃傷沙汰に発展したケースもある。

1999年9月、加害者のホームレス(52歳)が、同じくホームレス仲間だった3人(57歳、62歳、69歳)をバタフライナイフで刺殺し、荒川に投げ込んだ事件は全国のニュース番組で報道された。犯行理由は、殺された男性のひとりに「俺にばかり水くみさせるな」と言われたことに腹を立てたという。ちなみに彼は犯行時に覚醒剤を使用していたということで「心神耗弱だった」とされ、2006年6月、一審の死刑判決が控訴審判決で破棄され、無期懲役の減刑判決が出ている。

金銭目的で殺人事件に発展するケースも

金銭目的で殺人事件に発展するケースもある。2004年8月には、淀川河川敷でホームレスらが、お金を持っていたホームレス仲間から現金約100万円を奪ったのちに、フライパンで殴打し、粘着テープで縛って、深さ2メートルの穴に生き埋めにして殺害した。この事件が発覚したのは、 10年経った2014年7月だ。ホームレスの2人(53歳と46歳)が捕まって、その後無期懲役の判決が出た。

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近年でも、2017年11月、荒川河川敷でホームレスが、酒を飲んで口論となり、同じ集落で暮らすホームレス(61歳)をハンマーで撲殺した事件が起きている。

ただ、こういった事件は本当に氷山の一角だ。殺害にまで至らない事件だと、ホームレスは、騒ぎになり河川敷から追い出されることを恐れ、口をつぐんでしまうケースも多い。

また、西成警察のホームレスへの態度は特異ではあるものの、治安を守る立場の警察にぞんざいに扱われた過去がある(と本人が思っている)ホームレスは多く、その場合は警察そのものを信用していないのだ。実際、多摩川の川崎側の河川敷で若者からの暴力被害に遭った男性が、川崎の駅前の交番を訪れたところ、「お前ら(ホームレス)の相手をしているヒマはねえ」と一喝されたという。

河川敷の集落で生きるにも、そこは野外で、人目につきにくい場所である。それなりのリスクが発生する。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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