※ 前編はこちら:ソニー、マッキンゼー、DeNAで学んだこと
ゲームをどう社会貢献に使えるか
瀧本:今、森本さんがやっている仕事は、どんなものですか。
森本:今、やろうとしているのは、ゲームを使って社会的使命を果たすというものです。僕はカネスタとDeNAで、ゲームの力を見てきました。しかしゲーム自身は必ずしも主流のメディアに置かれていない。でも一方で、数兆円のおカネと、すごい技術者と人とが集まってきている。この能力やマーケットの力を使って、世の中にもっとポジティブなインパクトをもたらす事業ができるんじゃないかと期待して会社をつくりました。
要は、貧困、食糧問題、自然災害など社会問題を扱ったゲームを出す。そのゲーム自身に魅力があって、収益を得る仕掛けを持っています。その収益を現地の活動やNGOに提供することで、間接的にその問題を解決するという事業です。
僕もこんなビジネスモデルは見たことがないので、そういう意味ではリスクがあると思います。でもやることに価値があるし、どういう形で成長していくかわからないけれど、実現できるものだと感じています。
瀧本:まさに運営的にはシリアスゲームと言われるゲーム的手法を使っていますね。ゲームで何か学習させるとか、社会的にインパクトのあることをするというのは、わりとはやりかけている分野ではありますが、それを発展途上国とか、マイクロファイナンス的育成などというのは、あまり聞いたことがない。
ゲームのデモ版を見せてもらいましたが、シムシティっぽい感じで面白い。そもそもマイクロファイナンスが生まれたのも、発展途上国への単なる支援ではなく、ちゃんとリスクとリターンに見合うようにしたほうが、結局、うまくいくからですよね。そのヨルダンの人が「平和になればビジネスをして稼げるんだから、援助がほしいわけじゃない」と言っていたように。
森本:そうなのです。今、NGOとか学校が、教育にゲームを使おうという動きがあります。でもかなり教育色が強くて、なかなかビジネスになりにくい。メッセージは伝わるかもしれないけれど、おカネが集められない。だからゲームとしてちゃんと成立するような形で、プロのゲーム開発メーカーにお願いしています。
今、マイクロクレジットというのは、貧困を解決する、「打ち出の小槌」のような言われ方をしていますが、いちばん重要なのは、発展途上国の中で生まれた仕事だということですね。マイクロクレジットはバングラデシュで生まれて、バングラデシュの成長を下支えしている。バングラデシュは過去20年間、6~7%の成長率を維持していて、10年の間にGNPが倍になっている。たとえば僕がパートナーになっているBRAC(ブラック)という世界最大のNGOがありますが、そこはNGOでありながら年間500億円の収入をマイクロクレジットから上げている、超優良企業です。
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