世界で戦える企業・人材になる修行法とは? 森本作也×瀧本哲史 対談(後編)

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今の若者に対して言いたいこと

――森本さんのところは、社員は何人かいらっしゃるんですか。

森本作也(もりもと・さくや)
神戸大学経済学部卒業、ソニーに入社し、サウジアラビア、アラブ首長国連邦に駐在。その後、休職し米国スタンフォード大学経営大学院(MBA)に自費留学。修了後マッキンゼー&カンパニー東京オフィスに入社し、モバイルを含むハイテク関係のプロジェクトに従事。フィンランド駐在を経験した後、シリコンバレーに本拠を持つベンチャー、カネスタに入社。カネスタのマイクロソフトへの売却後、DeNAに入社。北米子会社であるDeNAグローバルにて新事業立ち上げなどを担当。DeNA退社後、シリコンバレーにて社会的企業MiCMALiを立ち上げるとともに、東大情報理工学系石川・奥研究室のスピンアウトであるエクスビジョン株式会社取締役に就任。 著書に『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだ グローバル・リーダーの流儀』。

森本:今は基本的に全部アウトソースしていますから、雇ってはいません。要するに僕のビジネスは、口コミで人に伝わっていくので、足が長い。だから初期コストを下げて市場の反応を見てからでないと、自分のリスクは負えても、人のリスクはちょっと負えませんね。

瀧本:むしろアライアンスを通じてバーチャルなチームをつくったほうが、雇い入れた場合よりも優れた人材と組める可能性がある。会社のステージによって使う人も変わってきますから、その時々に合わせてバーチャルなチームをつくるのは、少ない資金で回すときによくあるパターンですね。

森本:たぶん効率は100%自社でやったほうがいいでしょうけど、立ち上がるときは、まだお互いそれに100%自分の人生を懸けていいのか、わからない。だから週末だけ付き合うとか、時間で付き合うという状態で話を進めるほうがいい。あとは紹介がものすごく重要で、基本的には紹介じゃなかったら、怖くて一緒に仕事はできませんね。口がうまい人はいっぱいいますから。といっても、あらたまって履歴書を送ってどうこうじゃなくて、ほとんどは「ちょっと手伝ってよ」みたいなところから始まる。だからコミュニティに認められておくことが、けっこう大事なんですよね。

瀧本:逆にどういう人と付き合っているかをみれば、その人がどの程度かわかる。いい人を紹介すれば自分のクレディビリティ(信頼性)も上がるし、ダメな人を紹介したら下がる。

森本:スカイプとメールだけで話が進んじゃうから、永遠に会わない人もいます。ただ、スキルを出し合って、時間を切り売りしている分にはそれでいいけれど、生きるか死ぬかの修羅場をくぐり抜けるときのメンバーは、やっぱり顔を見て選ばないといけないでしょうね。

――今の日本の若者に対して、何か言いたいことはありますか?

森本:目を引くのは、建設的な批判をしてくる人ですね。「こうするべきですよ、なぜならこうだから」と言うのは、上から嫌われるかもしれないし、リスクが高い。でもそれを背負ってでも、自分が正しいと思うことを言うべきだという覚悟がある人には感心しますね。

日本のベンチャーの人と話をしていると、なんとなく感じることがあります。ソニーは僕がいたときすでに日本国内での売り上げが4分の1しかなかった。ソニーの成長期は日本の市場が小さかったし、日本には伝統的な日立などの大企業もあったから、そこと市場をずらすためにも海外に行くしか方法がなかった。つまり別にカッコつけてグローバルと言わなくても、最初からグローバルで生きていかざるをえなかった。だから日本の企業であることは、ある種、捨てたというか、薄めた。やっぱりグローバリゼーションって、日本の会社であることをやめるぐらいの覚悟が必要ですね。

日本は市場がある程度大きいから、今のベンチャーは日本だけを対象にしていても、そこそこ生きていける。でもそこそこまでいってしまってから、海外に出て行こうとすると難しい。たぶん、日本で1番になるのに必要な努力と、世界の戦における努力は違うからだと思いますよ。

瀧本:今の日本のベンチャーというのは、日本国内のマーケットに合わせたからこそ、デカくなった。それをそのまま海外に行っても通用しないでしょう。 そういう意味では、ソニーというのは自分が異者であることを前提に、自分からなじんでいこう、わかってもらおうという努力を非常にしてきたわけですよね。そういう努力が、一般的な日本の企業には不足しているんじゃないかなという気がしますね。

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