獣や魚がどうなのかは知らない。だが古今東西、老若男女、人が悩み、迷うのは確か。“戦う哲学者”中島義道氏が開く人生相談道場に “同情”はない。ここにあるのは、感受性においてつねにマイノリティに属してきた中島氏が、壮絶な人生経験を通じて得た、ごまかしも容赦もない「ほんとう のこと」のみ。“みんな”の生きている無難な世界とは違う哲学の世界からの助言に、開眼するも、絶望するも、あなた次第である。
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【Vol13】はじめまして。こちらの人生相談に合う内容かはわかりませんが、中島先生のご意見をいただきたくてメールしました。
冗談のつもりで言った言葉で他人を傷つけていることが多いようで、どうしたらよいかと戸惑っています。このことを悩むべきことだと思うようになったのは、仕事で身近に接する先輩に、「またバカにしたな!(笑)」「そんなことを言っていると、人によっては逆鱗に触れるぞ!(笑)」というように、冗談とも本気ともとれる言い方で頻繁に注意されるようになったからです。先輩は笑ってくれていますが、一理あるのかもとも感じています。
思えば中学生くらいから、中程度以上に仲のいい友達には「○○ちゃんと話していると時々グサッとくる」と言われることがありました。いろんな場で「天使のような顔でひどいことを言う」と紹介されることも多かったように思います。それをずっと直せていないのだから罪深いですが、何を、なぜ言ってはいけなかったのかが毎回漠然としかわかりません。注意はされますが、個性として温かく受け止められているようでもあり、悩んで直すべきなのかもいまだにわかりません。
おそらく、相手について思ったこと(批判でも意見でもなく、敬意と冗談を込めた、ときに風刺的な感想)を立場の上下に関係なくストレートに言うために、相手が驚いてしまったり傷ついたりするのだろうという認識はあります。建前や少しも思っていないことをこの口から発することは、不快すぎてできません。社会生活上、便宜的に嘘八百の建前を話すことがありますが、微妙に建前を織り交ぜた話し方をする意欲がないので、わたしの話は「嘘か真か」の二者択一になっています。
わたしも直感的に人を選んでいて、「真」しか話さない(それゆえに傷つかれることがある)人は物事を柔軟に受け止めてくれる人だと判断し、その人たちが比較的好きだからそうしています。だから、実際には、冒頭の先輩を含め、目の前で本気で激昂されるような深刻な地雷を踏んだことはほとんどありません。こんな状況なので、敬意を込めて言っているのだから、別に多少驚かれようとズバッと言い続けてもいいではないかと開き直ってしまいそうになります。ちなみに、社会通念を大事にしていて、「逆鱗に触れ」そうな人には、当たり障りのない「嘘」しか言いません。
そもそも、ストレートに感想を言うくらいで驚かれるとは、皆どれだけ本当の気持ちをひた隠して(あるいは、本当に当たり障りのないことしか思っていないのか)過ごしているのかと不思議になります。中島先生はわたしのように人を選ぶこともせず、真正面から何でも伝える方だと思いますが、あえてお聞きします。わたしは態度を改めるべきなのでしょうか。28歳、研究職、女性
今回も、またまた困りました。相談者が「私は態度をあらためるべきなのでしょうか」と聞いてくるのに対して、こちらで用意でき相談者が満足するような「答え」はないからです。というのも、ある人が周囲の人々から、「意に反して」疎まれている、あるいは、嫌われている場合、いかにそれが不当であっても、次の二つの選択肢しかありません。
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