会社で好き勝手するための権力・利益・愛 魅力あるナンバーワンのホストになれ!

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ホストクラブに置き換えて考えてみる

男の場合ですが、あなたがホストクラブのホストだとしましょう。もしあなたが、職場で自由でありたい、自分の思うままとは言わないまでも、他人から不当な干渉をされたくもなく、うさんくさいお説教をされたくないし、もちろん軽蔑もされたくない。そして、自分の信念や感受性に忠実に思うままに働きたいとしましょう。具体的に言えば、店長にペコペコしたくなく、「嘘八百の建前」を語りたくなく、「ズバッと言い続けて」いたい。

その場合、これを実現する道は一つだけあります。つまり、あなたが「ナンバーワンのホスト」であって、かつ人間的にも魅力があればいいのです。会社はあなたを手放さないでしょうし、あなたの自由をかなりの程度認めてくれるでしょう。そして、あなたが、それでいて人間的に魅力があれば、周囲のホストたちもあなたから技術を学ぶという利益が得られますし、誰もあなたに悪口を言わなくなるのではないでしょうか?

それに対して、あなたが売り上げ最低のホストだったら、あなたは限りなく不自由であり、あなたの望みはほぼまったく閉ざされていて、いかにあなたが不平を言っても誰も聞いてくれない。あなたは、会社や周囲の人々の思惑に従うほかないでしょう。

なかなか世間は厳しいものです。といって、誰もがナンバーワンのホストになれるわけでもない。では、どうしたらいいのか?

私が、自分が「普通でない」と自覚している人々、それゆえいろんな形で(広い意味の)社会から排斥されている人々に対して強調したいことは、いつの日か周囲の人びとが「目を覚まして」あなたの「正しさ」をわかってくれるだろうと期待しても無駄だということです。自分を変えることなく、じっと他人の「好意」に期待しても、何も天から降ってくることはない。

そこで、社会から排斥されかつナンバーワンのホストにもなれない人の今後の生き方ですが、大きく分けて二つあるように思います。

一つは、他人にあえて理解されようとせずに、ひとりで生きられる職業を見いだして、「あきらめて」生きること。そして、二つ目は、血の出るような努力をして自分を変えること。どう見ても、前者の方がラクだし、人間味もある。というわけで、私は前者を選んだのですが、不思議なことに、そうしているうちに、狭い範囲ですが、私のそういう生き方を理解してくれる人が少なからず現われてきたのです。・・・・というわけで、いつものように、また私の話になってしまいましたので、このあたりで終わりにします。今回の参考文献は『人間嫌いのルール』PHP新書と『働くことがイヤな人のための本』(新潮文庫、日経文庫)です。

中島 義道 哲学者

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なかじま よしみち / Yoshimichi Nakajima

電気通信大学元教授・哲学塾カント主宰
1946年福岡県生まれ。77年東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。83年ウィーン大学基礎総合学部哲学科修了、哲学博士。専門は時間論、自我論。2009年電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授を退官。現在は「哲学塾 カント」を主宰し、延べ650人が参加した。著書は『働くことがイヤな人のための本』『私の嫌いな10の人びと』『人生に生きる価値はない』(以上、新潮文庫)など約60冊を数える。

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