獣や魚がどうなのかは知らない。だが古今東西、老若男女、人が悩み、迷うのは確か。“戦う哲学者”中島義道氏が開く人生相談道場に“同情”はない。ここにあるのは、感受性においてつねにマイノリティに属してきた中島氏が、壮絶な人生経験を通じて得た、ごまかしも容赦もない「ほんとうのこと」のみ。“みんな”の生きている無難な世界とは違う哲学の世界からの助言に、開眼するも、絶望するも、あなた次第である。
※中島義道氏への人生相談はこちらから
私の理解を超えた恋愛相談に挑む!
今回は、正直、困りました。「2shotダイヤル」というものがまったくわからないからです。それで、編集者に聞いてみたのですが、ぼんやりとしかイメージが浮かばない。私は大体、信頼できる人間関係は直接の出会い(パーソン・トゥ・パーソンの関係)しか認めないので、電話(声)だけで恋愛が可能だということ自体がわからない。「お互い顔も姿も知らない」同士が恋愛するとは、私の理解を超えている。それでも、「答えてしまう」のが、プロの哲学者(?)というものです。
普通、人が人生相談を持ちかけるときは、次のような心の状態にあるといっていいでしょう。すなわち、自分はAとBとの間で迷っている。Aは人聞きもいいし、安全だし、常識にもかなっている選択肢。そして、Bは逆に、人の顰蹙を買うかもしれず、危険を伴い、非常識な選択。そして、相談者は、みんながAを勧めることを知りながら、Bを選びたい、とは言わないまでも未練が残る。それで、Bを選ぶ自分の背中を押してほしい、あるいは、勇気を与えてほしい、あるいは、逆に、Bに未練が残らないほど恐ろしい選択であることを教えてほしい……大体、こんなことだろうと思います。
そして、私は「普通」ではないので、こうした要求を充たすことはできません。私は以上のような場合、直ちにBを選ぶように勧める。なぜなら、この人生は死にたくなるほど退屈でへどが出るほど下劣なので、自分の欲望を抑えて、あえて「安全な選択」をしても、とりたてて得るところはないからです。あるとすれば、さらに退屈でさらに下劣な人生を「つつがなく」過ごし、「安全に」死ぬことだけでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら