人生で迷ったら、直ちに危険な道を選べ! 相手のすべてを知り尽くしたら、恋愛できない

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こういう場合、もはや手遅れで、「声だけ」に戻ることはできません。若い(として)あなたには酷かもしれませんが、他人などわかり合うわけはないのであって、ただ「わかったつもり」になっているだけなのです。今、あなたは彼女の「人となりがわかった」と書いていますが、実は「わかったつもり」になっているだけですし、実際、会ってみても同じでしょう。

ですから、会って話をすればするほど「わかり合えないことがわかる」というストーリーも成り立ちます。

幻滅を覚悟して彼女に会おう

最後に、以上のことを踏まえて具体的にアドバイスをします。彼女に会うべきでしょう。その場合、自分が相手に幻滅すること、自分が相手に幻滅を与えることを十分「予期」して(心の準備をして)、会うべきです。そうすれば、そのとおりになっても、それほどの衝撃はないでしょうし、実はそうでないとき(「すばらしい出会い」とは言えないまでも「けっこういい出会い」のとき)は、大きな喜びに変わるからです。

初めに「すばらしい出会い」はたぶんないだろうと言いましたが、とにかく2年にも及ぶ「恋愛関係」なのですから、たとえ「声」だけにしろ、信頼関係が成立しているので、大きな幻滅はないように思います。人間の想像力は思いのほか威力があり、知覚によってとらえた相手をも包み込む。たとえ、初めはイメージと違うな、とややがっかりしたとしても、「声」だけで好きになれたのですから、しだいにその「声」が相手の顔や容姿と自然に結び付いてそれらに「浸透し」、あらためて(新しい相貌の下に)好きになることは大いにありえることです。

今回は、拙著からの参考文献はありません。こうした体験が皆無だから仕方ありません。

中島 義道 哲学者

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なかじま よしみち / Yoshimichi Nakajima

電気通信大学元教授・哲学塾カント主宰
1946年福岡県生まれ。77年東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。83年ウィーン大学基礎総合学部哲学科修了、哲学博士。専門は時間論、自我論。2009年電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授を退官。現在は「哲学塾 カント」を主宰し、延べ650人が参加した。著書は『働くことがイヤな人のための本』『私の嫌いな10の人びと』『人生に生きる価値はない』(以上、新潮文庫)など約60冊を数える。

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