この1年で人事や人材開発分野には、数多くのイノベーションがもたらされました。AI(人口知能)の人事分野への適用が進み、人材探しから選考までをより効果的に行う新たな手法が導入されたり、従業員エンゲージメントへの関心が高まり、その向上への施策や測定方法についての進展がありました。企業がリモートワーカーをうまく管理していく方法も見出されました。
では、これからの1年でどんなトレンドが生まれるでしょうか。人事分野の専門家の知見を踏まえ、今後1年間何に注意を向けるべきか予測します。
すでに社内でのスキル格差は広がっている
世界経済は今後減速すると予測されています。本格的な不況には至らないものの、雇用拡大のペースが落ちて失業率が上昇し、経済格差も広がります。ひいては、新しい技術を身に付け、新たに生まれてくる仕事を得る機会が少なくなり、結果として、できる社員とできない社員のスキル格差は引き続き拡大するというのが大方の予想です。
実際、ワイズリー・エデュケーション・サービシズとフューチャー・ワークプレイスの調査によると、人事部門のリーダーの64%がすでに「社内でのスキル格差が広がっている」と考えています。
企業は自社のトップパフォーマーをいかに獲得し、つなぎとめるか、また社内人材のスキルアップを図っていくか一層の努力を求められるようになるでしょう。日本でも人材獲得競争は激化し、ある分野のトップパフォーマーや、AIやデータサイエンティストなど秀でたスキルを持つ人材に対して、従来の日本企業の常識を超えるような破格の待遇で人材を迎え始めています。
昨年はそれが新卒採用にまで広がり、新卒採用でソニーが最大730万円を払う仕組みを、NECが1000万の年収を提示したことが話題になりました。まだ一部の限定した例にすぎませんが、日本企業が従来の雇用慣例から大きく舵を切らざるをえない現在の人材獲得競争における危機感を表しています。
スキル格差の拡大を防ぐには、人材の獲得だけでなく、今いる人材の育成が真に必要です。残念ながら日本はこの点でも諸外国に大きく遅れをとっているのが現状です。人材サービスのランスタッドが、世界33カ国・地域で行った調査によると、スキルアップのための費用支援などを受けている日本の社員は約4割にとどまり、対象国中最下位でした。社員の教育にもっと投資し、AIやデジタルやIoTへの対応などのテクノロジーを最大限に活用し、スキルを磨くことを強く推し進めなければなりません。
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