日本でも先進的な企業で2年ほど前から実践で使われ始めました。AIを活用することにより、採用までの期間を短縮し、採用担当者の生産性を向上するだけでなく、応募のプロセスや候補者の体験も改善しています。アメリカでの調査では、今や40%の企業が採用の過程で候補者の選考や評価にAIを活用しています。
例えばリクルーティングテクノロジー企業のHireVueでは、候補者のPCやスマホのカメラを使って顔の動きや言葉の選択、声の調子を分析するAIシステムを提供しています。こうした要素の組み合わせによって、候補者は「雇用適性」スコアによってランク付けされ、採用担当者はそれを選考過程に取り込めます。
学習するデータによって偏りも
こうしたやり方は採用プロセスを効率化しますが、ここへきて、AIによるスコア付けや推薦に対する示唆について議論も浮上しています。それは、偏った判断になっている場合があるのではないか、それにより不公平な競争の場が生み出されるリスクがあるのではないかというものです。
そもそも学習するデータが過去のものであれば、過去の価値観に基づいた判断をAIは下します。学習する基となるデータに偏りがあれば、不利益を受ける可能性があるのは当然です。例えば女性があまり活躍していなかった時代のデータを学習していれば、AIが導き出す回答では、性別の中立性は保てないでしょう。
また、個人情報保護という点でのデータの扱いについても、倫理性の観点で厳しい見方が年々強まってきています。GDPR(EU一般データ保護規則)の施行はそれを象徴しています。インターネット上には個人を特定できるIPアドレスやクッキーの情報もあり、例えば、AIが示唆する属性やタイプの情報を、個人データと照らし合わせることも事実上可能だからです。
昨年、リクルートキャリアが、就活サービス「リクナビ」上での行動パターンからAIが予測する内定辞退率のデータを、企業に販売していたことは大きな問題となりました。
専門家は2020年がAI活用法を見直す1年になると見ています。人事コンサルタントで『Evil HR Lady』著者のスザンヌ・ルーカス氏は、「すでに企業には、AIシステム内の偏見の有無について厳格な調査を求められるようになっています。2020年には多くの企業が、欠陥のあるシステムを使えば役立つどころか痛い目に合うことを知って、相応の対応を迫られることになるでしょう」としています。
こうした3つの人材開発業界におけるトレンドは、アメリカと日本、それぞれが抱えた事情も反映していますが、テクノロジーの活用については同じ課題が見えます。次にどういうトレンドが訪れるのかを理解し、それに対して何をすべきなのか、自社が取り組むべきことは何なのか、これを機に整理してみてはどうでしょうか。
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