健康な社員ほど仕事の生産性が高いことは、複数の調査で明らかになっています。また、社員の健康度が高まれば離職率も低下します。こうした効果が広く知られるにつれ、近年、企業の人事部門が社員の健康増進に一層力を入れるようになっています。
この点では、日本は先行していると言えます。日本では少子高齢化による労働力不足を見込んで、国の重点政策として「健康経営」が打ち出されました。健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点で考え、従業員の活力向上と生産性の向上を図るというものです。
がん治療と就労の両立を支援
日本ではここ数年にわたり働き方改革と並行して積極的に取り組まれてきており、経済産業省による「健康経営優良法人」や「健康経営銘柄」認定制度もあります。この優良法人に選ばれている日本航空では、チーフ・ウエルネス・オフィサーを設け、中期経営計画と連動した健康推進計画を内外に公表。生活習慣病やがん、メンタルヘルス、喫煙、女性の健康など重点項目に対し、具体的に受診率などの指標を設けて取り組んでいます。
社員の健康を企業も支援するという姿勢は、働く人に安心感をもたらし、企業への信頼感が増すのに一役買うでしょう。日本航空では、がん治療と就労の両立支援にも力を入れており、過去5年において両立が困難で退職した社員はゼロという記録を更新中だそうです。
一方、アメリカ企業では、社員の健康は二の次であまり注目されてきませんでした。が、昨今はやなり優秀な人材を引き止めるための施策として脚光を浴びてきており、西海岸のハイテク企業がマインドフルネスやヨガをできるスペースを用意するなどしています。
とはいえ、企業と社員の捉え方にはギャップがあります。保険会社エトナの調査によると、雇用主の70%が「適切な福利厚生制度を提供している」と考えているのに対して、これに同意する社員は23%にすぎませんでした。同様に、全世界の労働者の82%が「メンタルヘルスの問題が仕事上の能力に影響を及ぼす可能性がある」と不安を感じているにもかかわらず、「メンタルヘルスの問題に十分なサポートを提供している」と思っている雇用主は25%にすぎませんでした。
今後1年間、企業による健康支援への姿勢はますます進化する兆しが見られます。前述の疾患治療と就労の両立を支援するような体制やメンタルヘルスのサポートは、高齢化社会に向かうにつれますます重要になるでしょう。
多くの企業にとって、AIは人事部門が人材獲得のために行うさまざまな取り組みに欠かせない要素になっています。履歴書や、場合によってはネット上にある膨大な個人データをAIが機械学習することで、より適切な人材配置や採用を支援するというケースが出てきています。
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