ヤフオクで40万円!『醗酵人間』の魅力とは? 戦後SF最大の怪作。この2月にマニア待望の復刻も

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マニア垂涎の『醗酵人間』。しかしこの画像は単なる初版本の書影ではない。正体は4ページ目に!

納豆、しょう油、ミソ、糠漬け、ワイン、チーズ、バター、そして私の大好きなカルピス--。これらに共通するものは何でしょうか?

そう醗酵食品です。醗酵するといい味になるわけで、世界中にすばらしい発酵食品がある。でも、人間が醗酵してしまうとどうなるのか。そんな奇天烈な設定で、タイトルからして土肝を抜くのが、栗田信の『醗酵人間』である。

今回取り上げる『醗酵人間』は、これまで取り上げてきた「有名大家の珍作、意外な作品」という路線からは打って変わったものだ。編集部から難色を示されようが、一部の読者の皆さんに眉をしかめられようが、どうしてもこの本を取り上げて、その魅力についてきっちりプレゼンテーションしたかった。

何しろ、『発酵人間』は、「戦後最大の怪書」ともいわれるほどの、ものすごくイカれた本なのだ。それでいて、この手の本のマニアであれば皆が知っている、という意味では有名な本なのでもある。

いったい、どんな中身なのか。気になるでしょう?

SF珍本ベストテン

その前に、この本がなぜ一部のマニアの間で有名になったのか、そのきっかけを説明しておこう。

30年ほど前に「BOOKMAN」という、本好きのための雑誌の第16号で特集されたランキングに、「SF珍本ベストテン」というものがあった。これは入手の困難さと内容の珍妙さ、そしてほんの僅かに歴史的意義といった観点から選ばれたもの。そこに選ばれた数々の珍書、稀書を目の当たりにした当時の若き本好き達は、自分達のちっぽけな常識では考えられないような珍無類SFの大海原に目を剥き、更なる探書の旅路に出発する決意を固めたものであった。何を隠そう私も、その1人である。

SF珍本ベストテンにおいて、内容の荒唐無稽さから「戦後SF最大の怪作」との高い(?)評価を得ていたのが、栗田信の『醗酵人間』であった。

栗田信は、主に昭和30年代にスリラー、SF、時代ものといったエンターテイメント小説を書いていた(失礼ながら)二線級の作家だが、スリラー『夜来る悪魔』、 時代もの『河童の源四郎』など、どんなジャンルを書いても、トンデモ的意味合いで歴史に残る怪作を遺した、大衆文学界の偉大なあだ花である。

そんな栗田信の「ゲテモノ小説」群の中でも、最狂最兇のインパクトを誇る幻のSFが『醗酵人間』である。 あらすじはざっとこんな感じだ。

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