何がどう間違ったのか、本邦経済誌の中でも最高の品格を誇る東洋経済オンラインのアクセスランキングにおいて、戦後最兇ゲテモノSF『醗酵人間』をレヴューした前回の稀珍快著探訪が、ほんの一瞬とはいえベスト3入りしてしまったのだから世の中分からない。
こうなると現金なもので、『醗酵人間』のあまりの程度の低さに眉をひそめていた編集担当から、「前回省略した『オレだけの醗酵人間』製本秘話も是非頼む 」「なるはや。すぐに書いてほしい」という、鬼のような要請が。正直、そんなマニアック過ぎる職人作業について喜んで読んで下さる方がおられるとも思えないが、前回の『醗酵人間』ネタを読んで下さった方は、因果と諦めてお付き合い頂ければ幸いである。
3週間掛けて挑んだ「マイ復刻」
のっけから訂正で恐縮だが、前回『オレだけの醗酵人間』復刻に1週間を要したと書いたが、改めて当時自分が取っていた記録をひもといてみたら、なんと1週間どころか3週間もかけて復刻をしていた。とどまるところを知らぬ醗酵人間愛である。しかも『オレだけの醗酵人間』のそもそものスタートとなったネット検索は、海外出張から帰国したその夜に行っているのだから、我ながら好きものぶりに呆れる他ない。
まず『醗酵人間』の誕生から、筆者が『醗酵人間』の製本を決意する2007年までの流れを時系列で整理しておこう。
・・・・復刻への血と汗の3週間は、ここから始まる。
第1ステップ 図書館にアプローチ
さて帰国日深夜に『醗酵人間』がT県図書館に架蔵されていることを知った翌朝、数時間のみの睡眠で飛び起き、心臓が破れそうなくらい緊張しながらその図書館に電話をした。図書館の方は少し調べてから、拍子抜けするくらいフツーに「はい、『醗酵人間』ですね。ありますよ。ただ後で製本し直してあるみたいですけど」と回答してくれた。
確かに真人間にとっては『醗酵人間』なんて別にどうでもいい本なのだ。そんな当たり前の事実を実感しつつも、図書館相互貸し出し制度のお蔭で、4 日後の木曜日には、夢にまで見た『醗酵人間』が最寄りの図書館に到着した。もちろん即日取りに行き、数時間はニヤつきながらその本をなでまわしていた。この時、一瞬、耳元で「なくした、といって自分のものにしてしまえ!こけつかきつきつ」というささやきが聞こえたものの、そんな悪魔のささやきを払いのけ、複製を決意したのは、前回も記した通りである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら