第2ステップ 本体部分のコピーと余白部分の裁断
週末、すぐさまコピー店に行き、本体部分のカラーコピーを行った。本文ページは多色刷りではないので、カラーコピーをする必然性はゼロなのだが、『俺だけ復刻』は、オリジナルの古び方の再現も非常に重視されるので(重視「される」といっても実際は自分が重視しているだけなんですが)、カラーコピーはmustであった。
カラーコピーをすれば、当たり前のことだが、余白の部分は真っ白になってしまう。そこで真っ白の部分はそのコピー屋で裁断してもらった。たかがそれだけの作業であるが、コピーする時、左右ページを完璧にまっすぐコピーしづらく、多大な時間が掛かった。
さらに、紙質の選定、裁断する位置のミリ単位以下の細かい指定なども慎重に行ったため、「たかがそれだけの作業」に2時間以上を要し、さらに通常のコピー紙でない上質紙購入とカラーコピーの費用で6000~7000円を散財。こうして『醗酵人間』発見から最初の1週間がまたたく間に過ぎていった。
第3ステップ 本体の貼り合わせと再裁断
次の1週間は、貼りあわせだ。1週間を掛けて、裁断してもらった見開きコピーの貼り合わせをした。まず谷折りをしてから、丁寧に貼り合わせていった。
しかし、コピー屋のスタッフには裁断が完璧になるよう繰り返し繰り返し頼んだにも拘らず、完全に90度ずつのカットになっていなかったようだ。貼り合わせていくと、上部に1㎜未満ではあるがズレ(白い部分)が生じてしまっていた。そのため、貼り合わせが終わったタイミングで再度コピー屋に行き、上部1㎜未満のズレ修正のための再裁断を依頼した。
その際、気の毒にも前週と同じ担当者が対応してくれたのだが、血走った眼をした筆者の依頼を聞いているうち、たちまち「今、自分が話している相手はかなりヤバいヤツだ。気をつけろ」と悟ったようで、凄まじい集中力で(少し震えながら)、真剣に裁断に取り組んでくれ、最終的にはほぼ完璧に望んだ通りの形でのカットが完成した。 両面コピーにしなかったため、オリジナルの厚さよりも1㎝くらい厚くはなってしまったものの、無事に貼り合わせは完成した。本文部分だけとはいえ、一応本らしい体裁が少しだけ見えてきた。よしよし。
第4ステップ 表紙、背表紙の復元構想
思い入れのない本であれば、このあと適当な表紙と裏表紙をくっつけてそれで終わりでもいいのかもしれない。しかし、20年の時を経てようやく出会えた、この『醗酵人間』の製本については、自分の稀購本へのフェティシズムの限りを尽くしてやろうと思っていたので、適当な形で終わるつもりは毛頭ない。
次は、表紙だ。まず表紙絵をどうするか。オリジナルのカバーは顔から醗酵したヨーグルトのようなものがぽたぽた垂れているグロテスクこの上ない男の頭部が描かれている有名なものであるが、図書館から取り寄せた改装本にはそれがついていない。しかし、天は我を見捨てなかった。『醗酵人間』を正面からレヴューしてくれた北原尚彦氏の偉大な名著『SF奇書天外』に、『醗酵人間』の表紙に加え背表紙までカラー写真で収められていたのだ。
それを幸い、表紙を本来の単行本サイズに戻るよう拡大コピーした。背表紙については厚さが本物よりもかなり厚くなってしまったので、縦横変倍作業を行い、横もぴったりのサイズになるよう合わせて拡大コピー。裏表紙は当時、どんなものかわからなかったので、それは適当なものをこしらえた。この表紙、背表紙、裏表紙を組み合わせて再度コピーすることで、表紙用のジャケットは完成した。
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