第5ステップ 製本方法の選定と中背の補強
次に表紙本体の制作となる。本の作りとして、基本的に最もしっかりしたものは「丸背・ホロウバック」という手法(普通のハードカバー本の製本方法)である。当然のことながら、『オレだけの醗酵人間』もその手法で製本することに決めていた。
ホロウバック製本の場合、背表紙本体と本文ページの背中(中背)は離れ離れになる。その方が本を開いた時、背表紙が傷まないからだ。ただし、この製本方法の場合、本文ページの中背の補強が非常に重要なポイントとなる(ここら辺まで来ると、おそらくほとんど全ての人にとって、どうでもいい内容かもしれません。スミマセン)。
さて、ホロウバックのために、中背補強に取り組む。中背の補強をするためにはコンビニに売っているようなのりや紙ではなく、製本キットがどうしても必要だ。そう考えて、ネットで調べると、あな嬉しや。ほぼ購買層を図書館に限定した専門的な製本キットが見つかった。早速、中背補強用の「寒冷紗」なる紙と布によるテープ、紙をいためない製本用中性のり、そしてそれを塗る刷毛をネットにて注文。それが届いたのは発見から20日を経過した土曜日であった・・・・という記録が手元に残っている。
第6ステップ 表紙入手と表紙・カバーの作成
まだ終わらない。今度は、ハードカバージャケットを貼り付けるための表紙本体、つまり厚紙を用意しなければならない。製本キットで作成するという方法もあったのだが、今回は、同じ厚さの本をブックオフで買ってきてそれを分解し、その分解した表紙に先に完成したおどろおどろしいカバー絵の紙を張り付けることとした。近所のブックオフに定規をもって乗り込み、見事にぴったり同じサイズの本を105円でゲットした。
その土曜日は、重要な日であった。まず本体の背(中背)を到着したばかりの製本キットで十全に補強した後、コピー屋へと駆け込み、ハードカバージャケットと同じ絵柄で表紙カバーを作成した。帰宅後、翌日まではとても待ちきれず、最終製本を開始。まずブックオフで買った本を分解し、その表紙部分に『醗酵人間』の表紙をコピーした紙を貼った。といっても丸背・ホロウバックの場合、背表紙と表紙の間に溝が作ってあるので、手作業による貼り付けは非常に難航した。かなり悪戦苦闘の末、最低限どうにか満足できる貼り付けができた。
次に本体と表紙とのドッキング。これも全然ノウハウがなく見よう見真似でやったにしてはかなりそれらしく仕上がった。やはり岩をも貫き通す想いの一念であろうか。そして最後に既に大型文具店で購入しておいた高級堅和紙を遊び紙として堅表紙の裏に張り込み本体を完成させたのは、ネットで図書館架蔵の『醗酵人間』を発見してから丁度3週間たった日曜日の午前5時半頃であった。この時の喜びは、今でも忘れられない。
費用は1万数千円程度
こうして、『オレだけの醗酵人間』が完成した。ここまでに掛かった経費は全ページのカラーコピー代、拡大倍率を何度も間違えた表紙とカバー用のカラーコピー、製本キットで〆て1万数千円。入手困難でヤフオクで40万円で取引されるような本を、この価格で作れたのは、激安ともいえるだろう。
しかしある意味、かかった金額自体はどうでもいいことである。それ以上に重要な点は、フツーの勤め人が、3週間もの間、勤務時間以外のほぼ全てを1冊のゲテモノ本の復刻に捧げ尽くしたという献身ぶりである。これこそが何よりも尊いのではないだろうか(そう思いませんか? えっ、思わない!?)。
他人が、この1㎝ほど恰幅のよくなった不細工な復刻本にどれだけの価値や意味を見出だせるものやら全く怪しいものだが、筆者にとっては随所に自分なりの工夫が活かされた、非常に愛しい我が子である。いつの日か『醗酵人間』原本を購入できる日が来るとしても、この『オレだけの醗酵人間』は最も愛する我が家の家宝であり続けるのである。
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