「命がけの落書き」に映る2019年香港デモの現実 この1年いったい香港で何が起きたのか?

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

現在の香港では、落書きは「命がけ」といっても過言ではない。現地英字紙SCMP(South China Morning Post)によると、一連の抗議活動をめぐる逮捕者のうち、最年少は12歳の少年とみられる。彼の容疑は10月に旺角の警察署や太子駅の壁などに、スプレーで警察批判などの落書きをしたこととされ、11月に有罪判決を受けた。

深夜にもかかわらず必死にビラを貼る10代と思しき少女たち(2019.11.22筆者撮影)

12歳の少年がデモ活動を巡って有罪判決を受けたことは、香港各紙や海外メディアも大きく報じた。それにもかかわらず、落書きやビラは後を絶たない。

11月22日の夜10時半ごろ、香港島の繁華街、銅鑼湾のある高架橋の上を通りかかると、まだ10代半ばと思しき3人の男女が、必死に高架橋の窓ガラスに手を伸ばし、ビラを貼り付けていた。ビラを貼るのはフードで顔を隠した女性2人で、男性1人がそばで見張りをしている。

ビラの内容は、警察の暴力的な取り締まりを批判するものだったようだ。こうして貼ったビラも、翌日の夕方に通りかかった際にはすべて剥がされた後だった。

ますます制圧姿勢を強める

終息の兆しを見せない抗議活動に対し、香港政府はますます制圧姿勢を強める。10月4日には、香港政府が植民地時代の緊急状況規則条例(緊急条例)を発動し、デモ参加者のマスクや覆面の着用を禁止する「覆面禁止法」を制定。

デモ参加者の反発は激しく、同日午後には数万人が抗議デモを開催。警官隊との衝突が激化したエリアでは催涙弾が飛び交い、元朗地区では警官が14歳少年に対して発砲、負傷するという一件も起こった。

(左)「狗官(警官を“政府の犬”として蔑む意)」が書かれた柱(右)「殺人政権が市民を殺す」(2019.11.16筆者撮影)
次ページ休日だけだったデモが平日朝開かれるように
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT