香港デモ激戦区「元朗」に住む日本人一家のいま それでも彼らが「日本」に帰らずとどまるワケ

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武装警官隊が待機する元朗駅(写真:西城秀之さん提供)

民主化デモで世界の注目を集めている香港。しかし、煌びやかな香港島や九龍だけが香港の姿ではない。日本人駐在員は香港島や九龍に住んでいるケースが多く、観光地からも離れているため、日本ではほとんど知名度がないかもしれない。香港特別行政区の中で最も面積が広いのは、実は中国(深セン)と接する新界(NewTerritories:ニューテリトリー)というエリアだ。

2019年6月に始まった逃亡犯条例改正反対デモは、規模の大きなものは当初香港の行政機関が集う香港島エリアを中心に行われていた。しかし、7月21日に、新界の元朗(ユンロン)で起こったとある事件と前後して大規模デモは新界にも広がっていく。

この連載は今回が初回です。

またその日以来、元朗は毎月21日に鉄道やバスなどの公共交通機関がクローズし、催涙弾が飛び交うデモ激戦区に変貌してしまった。

今回はそんなデモ激戦区に暮らす、ある日本人一家を取材した。

一家は2016年から元朗で暮らしている

西城秀之さん(仮名・35歳)・美沙さん(仮名・39歳)一家が元朗で暮らし始めたのは2016年7月のこと。

秀之さんは日系電子部品メーカーの営業マン、美沙さんは航空会社のキャビンアテンダントだ。3歳と1歳の娘とフィリピン人ヘルパーの5人で、元朗駅から徒歩30分ほど離れた郊外のアパートメントに暮らしている。市街地までは、アパートメントの住人専用のレジデンスバスを利用することも多い。

元朗の街並み(筆者撮影)

「元朗がこんな形で注目されるなんて、思ってもみませんでした」。そう秀之さんが嘆くのも無理はない。

元朗はこれまで、九龍半島の繁華街、尖沙咀駅から鉄道で26分ほどののんびりしたベッドタウンだった。飲茶で有名な「大栄華酒楼」や、海老の卵が乗った麺で知られる老舗「好到底麵家」など。「B級グルメの街」として紹介している日本語ガイドブックもある。

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