香港デモ激戦区「元朗」に住む日本人一家のいま それでも彼らが「日本」に帰らずとどまるワケ

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

朝食、昼食、おやつ付き。公立幼稚園なので学費は無料だが、諸経費として毎月バス代750HKD(約1万0500円)、食事・おやつ代940HKD(約13160円)、昼寝時のシーツ代550HKD(約7700円)を支払う必要がある。また、入学時のユニフォーム代1000HKD前後(約1万4000円)や、半期ごとの教科書代2600HKD(約3万6400円)などの費用もあるが、それでも年間で3万3000HKD前後(約46万2000円)程度だという。

元朗エリアにも英語ベースのインターナショナルスクールはあるが、学費だけで年間12万HKD(約168万円)程度はかかるのが一般的。加えて年間10万HKD(約140万円)単位の寄付を求められる学校も珍しくない。コストパフォーマンスも考えて、公立幼稚園に入園を決めた。

「幼稚園にはとても満足しています。週4日で英語、週3日で北京語、週1で日本語の授業もある。園内の日常会話は広東語ですので、広東語・北京語・英語・日本語の四言語に触れられることになりますね。日本で同じ環境を作るのは不可能に近いと思います。まだ単語ですが突然、北京語をしゃべってくれるようになったのはうれしい驚きです」(秀之さん)

香港の公立学校は、ビザがあれば外国人でも通うことができるが、学校ごとに独自の入学試験を設けている。公立幼稚園であっても、英語もしくは広東語などの面接試験を受けて合格する必要がある。

デモについてどう感じているのか?

最後に、続く民主化デモについてはどう感じているのか聞くと、夫妻はこのように答えた。

「いろいろな歴史や、考え方があるのは承知しています。ただ人々が傷つく様子は、子どもたちには見せたくない。ある日娘を連れて電車に乗ったら、血を流した人々が映った車内テレビにみんなの目が釘付けになっていて、慌てて降りたことがあります」(秀之さん)

西城夫妻が住むアパートメント(筆者撮影)

「仕事柄、いろいろな街に降り立ちますが、このところ香港に帰ってきてもなにか空気が違う。誰かが傷ついているのは、心苦しいこと。こういうことがあったという事実は歴史にも、香港の子供たちの心にも残ってしまうでしょう」(美沙さん)

「私たちは外国人だから、いざとなれば帰るところがある。でも長女の幼稚園のクラスメートたちにとっては、ここが故郷です。そう考えるといたたまれない気持ちになりますね」(同)

富谷 瑠美 香港在住コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とみや るみ / Rumi Tomiya

2006年早稲田大学法学部卒。アクセンチュアで全国紙のITコンサルティングを担当したのち、日本経済新聞電子版記者、リクルートグループの編集者を経て、子連れで香港に移住。Twitterはこちら。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事