「命がけの落書き」に映る2019年香港デモの現実 この1年いったい香港で何が起きたのか?

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11月の第2週に入ると、それまで週末の夜や休日を中心に行われていたデモ活動が平日の朝から開催されるようになる。きっかけは、11月8日の大学生の死だ。

「学生は暴徒だ。暴徒は賊だ」。湾仔のバス停にて。黒スプレーで描かれた他の落書きとは異なり付箋にペンで書かれたように見える(2019.11.14筆者撮影)

香港科技大学の2年生だった男子学生は、11月4日未明抗議活動中に駐車場の3階部分から2階部分に転落し、8日に死亡した。

警察の取り締まり活動との因果関係は明らかではないが、デモ隊の間では「警官隊の道路封鎖により、救急車の到着が遅れたのではないか」という疑念があった。

帰宅できず途方に暮れる通勤者も続出

週が明けた11月11日月曜日からは、早朝から香港全土で抗議活動が激化し、交通機関が麻痺。この活動は約2週間続き、バスや地下鉄といった公共交通機関の運休や、駅の閉鎖が各地で相次いだ。

こうなってくると、店舗や商業施設だけでなく、一般企業の企業活動もままならなくなる。夕方の6時を回った香港島の湾仔や銅鑼湾エリアでも、帰宅できず途方に暮れる通勤者の姿も見られた。

香港島銅鑼湾の繁華街にて「SAVE CUHK(香港中文大を助けて)」(2019.11.22筆者撮影)

この頃は、交通妨害や、火炎瓶やブロックを投げる、武器をもって警官や中国人観光客と思しき人を襲うなどの暴力行為を行う若者に対する反感をつづった落書きも目についた。

また、香港中文大学や、香港理工大学にデモ隊が立てこもり、警官隊が突入して催涙弾や放水で制圧する事態も発生。多くの学生たちが逮捕されたほか、大学の敷地内に捜査令状なしで突入するのは「大学の自治」の侵害であるとして、香港全土に大きな衝撃が走った。

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