「命がけの落書き」に映る2019年香港デモの現実 この1年いったい香港で何が起きたのか?

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デモが続く中で、7月21日には元朗駅の鉄道襲撃事件(関連記事:『香港デモ激戦区「元朗」に住む日本人一家のいま』)が起こる。夜10時半ごろ、白Tシャツを着たマフィアとみられる集団が駅に乗り込み、手にしていた棒などで人々を殴打。妊婦を含む多数のケガ人が出た。

実際にはその数時間前から、元朗駅周辺でこの白Tシャツ集団が目撃されており、警察への通報は相次いでいたという。しかし、警官隊が駅に駆け付けたのは11時半近くなってからのことで、香港警察に対する人々の怒りが高まるきっかけとなった。

7.21以来、元郎駅周辺には多くのアートやレノンウォールが見受けられる(2019.10.15筆者撮影)

改正案の正式撤回をした

それ以来、元朗では毎月21日に抗議デモが開催されるようになったほか、レノンウォール(メッセージが貼られた壁)が設置され、駅周辺にはウォールアートのような大規模な落書きも見られるようになった。

書いては消され、その上にまた書かれる落書き。「五大訴求は一つも欠けてはならない」の文字も見える。香港島銅鑼湾駅付近(2019.12.10筆者撮影)

9月4日には行政長官が改正案の正式撤回を表明。10月23日には、立法会で逃亡犯条例改正案の正式撤回が宣言されたが抗議活動が終息することはなかった。

理由としては、それまでに未成年者を含む多数のデモ参加者が逮捕されていること、10月1日の国慶節に開催されたデモ活動で実弾が発射されたことを含む、警察の取り締まりへの批判などが挙げられる。

以後デモ隊の抗議活動は、普通選挙制度の実現を含む「五大要求」を掲げた民主化運動に形を変えて続くことになる。

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