「実はこうしたローカル料理の広がりは、インド国内でも見られます。例えば少し前までは、南インド以外の地域で暮らすインド人にとって、南インド料理は外国の料理に近い感覚で縁遠かったそうです。それが近年は、ヘルシーということでニーズが広がっていて、南インド以外の地域でも食べられるお店が増えています。北インド・デリーの朝食のビュッフェに、南インド料理が入っていたりするんですよ」(渡辺氏)
そして今、日本で最も勢いのあるカレージャンルといえば、スパイスカレーだろう。
スパイスカレーとは一般的に、ルウや小麦粉から作る従来の日本のカレーに対し、ルウや小麦粉を使わずにスパイスと具材を組み合わせて作るカレーのことを指す。
インドカレーの製法をベースとしつつも特定のスパイスを強調したり、和出汁や和食材を積極的に使うなど日本独自の解釈を加えたものが多く、南インド料理などの現地料理はスパイスカレーとはあまり呼ばない。要は日本独自のスパイシーなカレーだ。
カレーが持つ本来の多様性を反映
スパイスカレーといえば、メッカは大阪。2010年頃よりスパイスカレー的なカレーを出す店が増え、数年後には大阪ならではの自由でユニークなカレーとして、スパイスカレーが空前のブームに。そうして関西を中心に、スパイスカレーを出す店は爆発的に増えた。
さらに近年は、東京のみならず、全国的にスパイスカレーの店が増えている。実感としても、ここ1~2年でスパイスカレーという単語を耳にすることが劇的に多くなった。
スパイスカレーでよく見られるのが、1~3種類ほどのカレーと複数の副菜を所狭しとワンプレートに盛り付けるスタイルだ。そうしたスタイルは、いくつもの副菜とカレーを盛り合わせる南インド料理のミールスやスリランカ料理の影響も色濃いと言われる。
「なんといっても興味深いのが、スパイスカレーの文化の混ざり方です。インドカレーの製法を採り入れたりしつつ、盛り付けや料理のプレゼン法はスリランカカレーを反映していたりする。さらにその根底には、日本人が愛してやまないカレーライス=カレーとライスを1皿に盛るスタイルがある。スパイスカレーは、カレーが本来持つダイバーシティー(多様性)を色濃く反映した食べ物とも言えるんです」(渡辺氏)
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