よく見慣れた光景も、「カレー」というフィルターを通すことで、別の世界が見えてくる。同一ジャンルのカレー店が目につく街、本業の裏でひそかに“カレー活動”する人、局地的に巻き起こるカレーの新潮流。そうした、カレー目線からこそ見える異世界=「カレー経済圏」がある。
今回訪れたのは、東京・新大久保。韓流の聖地という印象が強いが、ひと頃よりは韓国系店舗の数は減り、現在はアジア各国の人々が集う多国籍タウンの様相を呈している。そんな中で、ワンコインでお腹いっぱいになるカレーランチがじわじわと人気を集め始めている。
相場の半額という破格ぶり
新大久保の新しい名物となりつつある食べ物。それが「ダルバート」だ。ダルバートとはネパールの食べ物で、豆のスープとごはん、そしてスパイシーなおかずがセットになった定食だ。ダル=豆、バート=ごはんの意だけに、ダルスープとごはんは必ず付く。その点では、みそ汁とごはんが必ず付く日本の定食にも近い。
おかずの内容はまちまちだが、サラサラなカレーに副菜と漬物が付くことが一般的。ネパールの人々は、これを朝に夕に毎日食べるという。日本ではまだマイナーな存在ではあるが、ダルバートを供する本格派のネパール料理店も年々増えている。値段はランチで1000円前後するのが相場だ。
ところが新大久保には、そんなダルバートを500円で提供する店がいくつもある。わかっているだけでも、アーガン、ニュームスタング、ラトバレ、ネパールレストランさくら、ベットガット、東京ロディクラブ、ダバカ、ナングロガルと8店舗にも上る。相場を考えると、破格値だ。
さらに驚くべきことに、ワンコインでありながら多くの店が「おかわり自由」で提供している。正確に言えばダルスープとごはん、そしてカレースープ(具を含まないカレー汁)が何度でもおかわりできるというシステム。しかもこれがランチタイムに限らず、オールタイムで適用されるというのである。
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