2010年代に入ると南インド料理以外にも、ネパール料理、スリランカ料理、パキスタン料理、さらには東インド料理、西インド料理など、それまではほとんど目立たなかったインドおよびインド周辺国のローカル料理の専門店も増えていった。
「南インド料理の成功により、よくある北インド料理以外にもインド料理にはフォーマットがあるんだと、気づいた人が多かったのでは。同時に、そうしたマイナーでディープな料理の面白さを理解できる人が増えた。だからこそ、ほかのローカル料理も受け入れられていったのだと思います」(渡辺氏)
本音を言えば、“故郷の味”で勝負したい
「お店を出す側のマインドの変化もあると思います。実は専門店が増える前から、パキスタン人やネパール人、バングラデシュ人などのお店はあったんです。でも多くは故郷の料理を前面に出さず、テンプレート化された北インド料理を出していた。
その理由を彼らに聞くと、決まってこんなふうに答えます。『本当は自分の故郷の料理で勝負したいけど、それでは商売として成り立たない。だから“ナン、バターチキン、タンドリーチキン”という、多くの日本人がインド料理といえばコレと思うものを出している』。
そうした状況が、南インド料理の成功や需要の変化を受け、変わってきている。要は、自分のアイデンティティーである故郷の料理で勝負しようという人が増えているんです」(渡辺氏)
また、そこにはインターネットやSNSも大きく影響しているだろう。ネットがない時代には手に入りにくかったマニアックな情報が、ネットの発達でグッと手に入りやすくなった。さらにはインスタグラムなどSNSが広がったことで、より目新しいものや珍しいものが好まれ、取り上げられるようになった。さらに渡辺氏は、近年の「ヘルシー志向」の影響も見逃せないという。
「南インド料理に限らずこうした各地域料理の多くは、主流の北インド料理よりも家庭的で胃に優しかったり、ローカロリーだったりします。そこも近年の食のニーズにマッチしたのではないでしょうか」(渡辺氏)
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