日本人が知らない「インド」強烈な不条理と魅力 10年以内にGDPで日本を追い越す経済大国

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自分の周囲が皆そうで、生まれてからずっと諦めて生きるよう教えられる。何か突出した才能に目覚めることでもなければ、これが自分の世界という思考になるのは仕方ないかもしれない。それが何千年も続いてきた。

ただ、都市部に限った話ではありますが、近年はカースト以上に英語力や高等教育、コンピュータ知識などがモノを言う現象も起きています。低いカーストでも理系の才能や商才があれば、チャンスが回ってくる。この社長は自分より低いカーストだけど、上質の服を着て高いものを食べている。そうハッキリ見える形で低カーストの成功者が増えてくると、経済活動においてカーストの位置づけはすごく曖昧になる。ただ家に戻れば、俺の娘を下のカーストにやるわけにはいかないという、浄不浄の考え方はいまだ根強いですが。

農村部ではレイプは普通にある

──本の中に「インドでは女性は常に不条理を受け入れる側にいる。問うてみても意味がない」という一文がありました。ネットでもインドの性犯罪がよく報じられますが、件数自体増加しているとか。

『新インド入門 生活と統計からのアプローチ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

男尊女卑社会であることは間違いない。すべての職業は男性が主導権を握ってるので、女性は生きるために男性に従うしかない。表面上は禁欲社会なので、はけ口を求め男性の負のエネルギーが爆発することがある。

実は農村部ではレイプは普通にあって、誰も気に留めてこなかった。でも2012年、首都で起こった「ギャング・レイプ」事件は医学生だった中流階級の女性が襲われたことで大きく報じられた。夜遅くボーイフレンドと歩く女性は、昔の価値観からするとふしだらな女性だったんですね。何千年の古い価値観と新しい現象が今衝突しているんです。

──最終章で「インドは美しい」というイメージを加えたいと書かれている。でも一般人からすると、それ、一気に飛びすぎです。

インドって昔から好き嫌いが分かれる。嫌いな人は最初に結論ありきで、インドは汚い、だからここがダメ、インド人はウソつき、となる。負のイメージを補強する材料ならインドは事欠きませんから。一方インド好きな人は、目の前で起こってることをなぜ?と考え、自分なりに解釈してその都度、こんな部分もあるんだなと違った推論を同居させられる。結論ありきだとインドは見えない。自分からアプローチしていかないと、適当な看板がそこら中に転がってる国ですから。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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