汗の本業は「体温調整」ではない
──体温調節の専門器官はないと聞き、虚を突かれる思いです。
体温調節は借り物レースです。暑いと皮膚血管が拡張したり、寒いと震えることで筋肉を使ったり、また褐色脂肪という熱を生む脂肪を使ったり。発汗もそうです。
──汗は専門器官化しつつある?
そうですね、ここまで体温調節に使っているのは人間だけです。ただ、汗の本業は滑り止め。ほかも、皮膚血管は循環、筋肉は運動とみんな本業があります。それらが、体温調節にも使われるようになった。これほど多くの器官、臓器を使って調節する体の機能はありません。しかも、極めて細かく調節されている。例えば、血圧は変動が大きく、高血圧の場合、服薬が必要ですが、体温調節で薬を飲む人はまれです。
──その「体温」は2つある。
脳や臓器のある中心の温度(コア温)と体表の温度(シェル温)です。人間は見かけよりも中身で(笑)、重要なのはコア温。ただ、環境に接する皮膚温は体温調節において重要です。コア温は37±0.3℃、皮膚温は30〜35℃です。
──最大7℃の差があります。
理由は代謝。摂取したエネルギーの8割は臓器や筋肉で熱になりコア温を高めます。そして、コア温を維持しようと筋肉、脂肪が断熱材として働きます。ただ、最終的には体温より温度の低い外界に熱は放出されます。
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