「気温」だけで熱中症危険度を判断すると危ない 気温だけでは図れない「熱」がある

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──その過程を無駄飯食らいと表現しています。

摂取エネルギーの8割を熱で放出していますからね。もっとも、高体温を保つのには理由があります。人体には物質の分解や合成を促進する触媒として多種の酵素が存在し、その活動の至適温度が体温より少し高めなのです。高体温維持によって酵素が働き、人間のアクティブな生命活動を支えている。また、代謝が上がると持久力が上がり、早く長く運動できるとされています。裏返しで、人間を含め恒温動物は飢えに弱いのです。

──進化の過程で体毛を捨て、高体温のうえ、精緻な体温調節機能を持つ人間が、なぜ熱中症に?

家畜のように行動の自由がない場合を除き、動物は暑くなると日陰や水辺に行き、じっとしています。いろんな器官を動員して体温よりも高い気温に対応できるがゆえに、仕事やスポーツで動き回ってコア体温が上がり問題を起こしてしまうんです、人間は。幼児や高齢者に多い古典的熱中症に対し、健康な成人に多いものは労作性熱中症と呼ばれます。

気温以外に危険度を示す数値は?

──活動の判断基準が気温に偏っていることを懸念していますね。

永島計(ながしまけい)/1960年生まれ。191985年京都府立医科大学医学部医学科卒業、1995年同大学大学院医学研究科(生理系)修了。同大学附属病院研修医、米イェール大学医学部ピアス研究所ポスドク研究員などを経て現職。専門は生理学、とくに体温・体液の調節機構の解明。(撮影:梅谷秀司)

熱は大気から体に移動するだけではありません。気温では測れない熱があるんです。太陽光や道路、ビルからの輻射熱といった赤外線エネルギーは、皮膚が「熱い」と感じる前からどんどん体内に入ってきて体温を上げているのです。

また気温が同じでも、日向か日陰か、汗をかいたときに風があるかないか、周囲が土や植物なのかコンクリートだらけなのかなど、その場の環境で影響が全然違う。天気予報は気温のみで熱中症の危険度を予想しているように見え、それだけじゃないのにと思います。

──気温以外にわかりやすい危険度の数値化はありますか。

WBGT(黒球・湿球温度)が国際的に最も用いられている指標で、日本でも屋外スポーツや建設現場で使われています。黒球で輻射熱、湿球で湿度、それに乾球で気温を評価して指標化したものです。個人用の携帯型計測器も発売されています。これを天気予報などで出せればいいのですが、気温が同じでも環境によって大きくWBGTは違うので難しい。

──ネットなら効果的では。

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