
深刻な貧困などの問題を抱える一方で、アメリカのシリコンバレーを支える人材を輩出するIT大国でもあるインド。13億人が住む「混沌の国」の素顔は(写真:Arkadij Schell/iStock)
13億人、10年以内に中国を抜いて人口世界一。GDPも10年以内に日本を追い越すと予想されるインド。その巨大市場に企業が熱視線を送っている。社会、経済、市民生活、さまざまなデータを挙げつつ、著者が触れてきた“ありのままのインド”を描く。『新インド入門 生活と統計からのアプローチ』を書いた国際交流基金職員の田中洋二郎氏に聞いた。
物乞いの数やアグレッシブさも激しい
──依然として、訳のわからない、混沌の国という印象なんですが。
強烈なイメージを放つ国ですからね。貧困レベルも、物乞いの数やアグレッシブさも激しい。一方で、数字のゼロを発見した国であり、アメリカのシリコンバレーの基盤を支えるIT人材供給国でもある。
──え、物乞いがアグレッシブ?
オート三輪に乗っていたとき、道端から物乞いが飛び掛かってきて、持ってたペットボトルを奪われた。それが空だったから、ふざけんなっ、と力いっぱい投げつけられて。堂々と物乞いしてくるし、成果がないと堂々と怒ってくるし。
──ところで今回、統計を用いたアプローチを試みたのは?
一度インドにまつわるイメージを壊してもらいたかった。道端の貧困だけ思い浮かべていると、今の経済大国インドが見えなくなる。数字は私の意見でも誰かの意見でもなく、事実を物語りますから。
──インドが大国なのは頭では理解しているんですが、いかんせん感覚との間にギャップが……。
矛盾するイメージを大量に放ち続けてる国なんです。経済発展著しいのに何で道が汚いままなんだ、何で農民は貧しいままなんだ、と当惑するかもしれない。でも人口13億に270の言語を抱える国の舵取りは難しいのが現実。中国のような1党独裁じゃないから、上海からはスラムが消えても、インドの都市からは絶対なくならない。
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