日本人が知らない「インド」強烈な不条理と魅力 10年以内にGDPで日本を追い越す経済大国

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──田中さんご自身、意外だったデータはありましたか?

飲酒経験のない人が9億人というデータ。へえそんなにいるんだ、と。イスラム教徒が2億人いて、人口の8割を占めるヒンドゥー教徒も禁欲の傾向が強いんだけど、飲む人はすごい飲むんです。個人の自由というか、個人の選択がそのまま尊重されている感じで。

あとボリウッド。ハリウッドの3倍映画製作して、観客数もアメリカの2倍。世界一の映画大国です。

実は牛肉輸出量は世界一

──牛が神聖視されていて、街中を闊歩している姿も浮かびます。

ヒンドゥー教では牛は食べない、殺さない。4年前、牛を殺して食べ冷蔵庫にも保存しているという噂から、リンチ殺人事件が起きた。

田中洋二郎(たなか ようじろう)/1979年生まれ。明治学院大学国際学部卒業後、2005〜07年インドのジャワハルラール・ネルー大学大学院に留学、国際関係論修士号取得。2007年国際交流基金に入職。2011〜2016年同ニューデリー日本文化センター駐在。現在、同日米センター上級主任。(撮影:尾形文繁)

ところが南東部諸州では牛の屠殺(とさつ)が認められていて、牛肉の輸出量はインドが世界一です。イスラム居住区に行けば普通に買えるし、牛肉を食べる人もブラジル、アメリカ、オーストラリアに匹敵するくらい多い。

──日本でも数年前にインド式算数がブームになりましたが、自然科学系学位取得者数が33万人いて、こちらの数も世界一と。

インド式掛け算、あれ暗記している人結構います。インドの教育って基本暗記型なんです。頭がいいっていうのは、記憶力が抜群にいいことを指す。暗算が速いのも、それだけ多くパターンを覚えているから、3桁も4桁もコツさえあればあとは暗記で応用が利く。

インド人がなぜ数学に強いのかは、私もよくわからないんです。ここに来ていろんな偶然が重なったと思うんですけど、そもそも英語ができれば海外で仕事ができる。そのときに理系の知識があればさらにお金が稼げる。

今や世界に名の知れたインド工科大学(IIT)は、頭脳立国を掲げて初代ネルー首相が創立した。それから70年、グローバル化時代が到来し、英語ができ、かつ理系に強いということで卒業生が世界の一流企業へ羽ばたいていった。それに続けと機運が高まり、国も後押ししてきた。

──さらに象徴的なのが、いまだ強固なカースト制度。最下層2億人の不可触民は、その身分をどう受け入れているのでしょう?

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