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対中国・対アメリカの貿易戦争にさらされるヨーロッパ経済、長期的な戦略的利益を守るために短期的な経済的痛みに耐えることができるか

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ヨーロッパ 地図
EUは今、欧米対立、欧中対立という2つの対立を考慮した緻密な戦略を立案しなければならない(写真:pixelchaos / PIXTA)

アメリカと中国が貿易戦争を仕掛けてくる中、EUは未知の領域に足を踏み入れている。EUは今、欧米対立、欧中対立という2つの対立を考慮した緻密な戦略を立案しなければならない。

チェコ・プラハに本拠を置く国際的NPO「プロジェクト・シンジケート」は多くの有力者の論評・分析を配信しています。「グローバルアイ」では、主に同シンジケートのコラムの中から厳選して翻訳・配信。文中一部敬称略

アメリカとの貿易戦争は、ドナルド・トランプ大統領のEUに対する公然たる敵意と、貿易に対する根本的な誤解によって起こるべくして起こった。

トランプ大統領はアメリカの対EU貿易赤字に不満を抱いているが、その赤字の計算はモノにしか及んでいない。トランプの関税は、アメリカ経済の足を撃つことになるが、経常収支の不均衡を是正することには何の役にも立たないだろう。

トランプは欧州を屈服させようとしている

これは貿易問題ではなく、政治問題である。トランプ政権は、アメリカの成長を危うくする危険を冒してでも、欧州を威嚇し、譲歩を引き出そうとしているわけだ。トランプはおそらく、欧州が屈服することで、簡単な「勝利」を国内で自慢できると確信しているのだろう。

その一方で中国との貿易戦争は、欧州経済にとって存亡を賭けた戦いである。こちらはアメリカとの争いよりも危険である。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、中国は生産性では先進国に追いついたが、賃金や社会水準では追いついていない。そのため、中国は多くの産業でイノベーションの最前線にありながらも、労働コストは多くの富裕国よりはるかに低いままである。

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