アメリカとの対立を意識して欧州を歴訪する習主席。ホスト国はそれぞれの思惑を秘める。
セルビア語で白い町を意味するベオグラードが赤く染まった。橋にもビルの壁にも、「熱烈歓迎、尊敬する中国朋友」のスローガンが躍る。1990年代末のコソボ紛争時の北大西洋条約機構(NATO)による空爆で崩れかけた建物が残る旧ユーゴスラビア国防省前や、破壊された旧中国大使館跡のそばにも両国の国旗がはためく。
習近平国家主席の訪問は24時間足らずながら、8年ぶり2度目。ブチッチ大統領とともに会談場所のセルビア・パレスのバルコニーに立ち、貸し切りバスで動員された地元の人々に笑顔で手を振った。
ブチッチ氏は「中国は一つ。台湾は中国のもの」と言い切り、習氏はコソボの問題でセルビア側を支持する。「鋼の友情」と呼ぶ関係は、100年の歴史を持つ倒産に瀕した製鉄所を「一帯一路」の名の下に中国マネーが再建した物語に由来する。時速200キロメートルで走る鉄道も中国の支援だ。
セルビアは人口約700万で、経済規模は中国の200分の1以下。「中国との取引は入札が少なく、不透明で裏金作りに結び付きやすい」(同国の野党)との批判もあるが、政権には都合がいい。友情は金が裏書きする。
中国は何を求めたのか
では、中国はこの旅で何を求めたのか。バルカンの地理的な重要性や鉱山への投資、中国製品の輸出といった要因もあるが、とりわけ今回は「欧州の友人の存在を示す」(セルビア紙)ことだろう。中国内外での世論作りだ。安全保障面で中国と欧米・日本など先進国との対立が鮮明になる中で、欧州の友人は貴重な存在だ。
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