小麦粉を使った2大加工品がパンと麺
──実は専門はパンだとか。
日清製粉の研究所では両方やりましたが、どちらかというとパンで、最も成果が上がったのが生地をこねる研究。こねる工程の研究が少ないので、酵母の表層にオワンクラゲの緑色のタンパク質を移植して目に見えるようにしました。
──ノーベル賞で有名な光るやつ。
可視化できた酵母を入れた生地をこねて凍結、1マイクロメートル単位でスライスし、一枚一枚酵母の分布を調べて3次元化し動径分布関数を求めるという論文を書いたら、日本農芸化学会の論文賞をいただきました。なので、本書の話が来たときも「パンの科学」ならすぐ書けると言ったんです。そうしたら、それはもうあります、って(笑)。著者の吉野精一さんはパンの分野では有名な方で、非常に優秀。彼が書いているなら仕方ないか、と。
──パンであれ麺であれ、小麦は粉にしないと食べられない。
小麦粒は表皮が内部に食い込んでいて、コメのように表面を磨いただけでは表皮をすべて取り去れません。表皮はにおいがきつくて食べられないから牛、馬の餌になる。全粒粉のパンは体にいいとわかっていても、あまり売れないでしょ。表皮を取るため砕いて粉にする。小麦粉を使った2大加工品がパンと麺です。
──麺=でんぷんという印象ですが、タンパク質も重要ですね。
小麦粉の成分としては10%程度しかないのに、麺の食感のほとんどはタンパク質で決まります。
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