──それは、瀬長さんの日記にあったんですか。
当時亀次郎がいた沖縄人民党の機関紙に記事が載っていました。後に沖縄返還に関わる密約があったことが明らかになりますが、あの論戦の場では亀次郎さんの言葉を受け、佐藤総理が「思いは同じである。平和な沖縄県づくりに私たちも邁進しなければいけない」と言う。それは本心ではあったというか、そう思いたいですよね。しかしその後、政治が歩んだ道はあの場で佐藤さんが言ったこととはほど遠いものになっていくんですが。
──「沖縄の問題は、本土からではわからない」という意見を聞いたことがありますが、この映画を見ていて、それを実感しました。本土の人間は、どのようにして土地が取り上げられて基地となっていったのかという戦後の事情ひとつとってみても、あまりにも知らないできた。佐古さんとしては、沖縄の視点で、それらを描き出したかったということなんでしょうか。
そうですね。沖縄のことをわかろうとする気持ちが本土の人間にないのが、今の問題だと思うんですね。よく考えてみてほしい。戦後日本がこれだけの経済復興を遂げてきたのは、沖縄が軍事占領されてきたことと引き換えだったんですよね。
この映画をしばしば「沖縄の戦後史」というふうに言ってもらえるのはそのとおりなんですが、それはまるごと「沖縄を切り捨ててきた、日本の戦後史でもある」ということを意識しておかないと、また沖縄がハンタイしているよという話になっていく。そこの事実認識を共有していかないと、まっとうな議論は起こらないだろうなと思っていています。
役所広司がカメジローの日記を朗読
──ところで、映画のナレーションが豪華ですよね。亀次郎の日記を朗読するのが、1作目は大杉漣さん。今度が役所広司さん。おふたりの語りのカラーが違っていて、1作目は抑えきれない「怒り」。2作目は「理性」。瀬長亀次郎という人物の2面を感じ取れました。
おっしゃるように亀次郎さんは両方をもっている人だったと思います。日記の中にもあるのですが、「これは怒りの爆発なんだ」と書く一方で、(米軍に指図され対立する人たちを)「憎んではダメだ」とも書かれている。闘う根底にあるのは愛情だという。確かに「怒る人」であるとともに、理詰めで迫っていく。大杉さんもそうですが、今回そこは役所さんなりのカメジロー像をつくっていただけたと思います。
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