米軍が恐れた「カメジロー」を再び題材にした訳

佐古忠彦監督が瀬長亀次郎を通して見た沖縄

とくに「海を見に行くんだ」と亀次郎がフミさんと出かけていく。海の向こうに本土である与論島がある。その島影を2人で見に行くんですが、役所さんのあの声で、2人とともに連れていってもらえる感じになるんですね。

──1作目の大杉さんのキャスティングについても、伺ってもいいですか。

亀次郎さんは市民の方との距離が近い、親しみのあるオジサンだったんですよね。そういう雰囲気を、大杉さんのあの雰囲気から出てくるんじゃないかというのがありました。私が担当している番組のディレクターで大杉さんとお仕事をさせてもらった人がいて、そのときのナレーションの印象がすごくよかったというのもありました。

大杉さんの声が入ると、カメジローが膨らんでくる。私もしゃべる仕事をしてきたので、(映画の基になった)テレビのドキュメンタリー番組では亀次郎の声を、自分で入れましたが、ぜんぜん違うわぁと思いました(笑)。大杉さんにしても役所さんにしても、にじみ出るものが違いますよね。

人間カメジローを見てみたい

──国会論戦にも出てきた水問題に戻したいのですが、あれは米軍が基地の用地だけでなく水源地を押さえていたということですか。

映画の中で詳しく紹介していますが、単なる水不足とか断水という話ではない。亀次郎さんの日記にも、「基地撤去の運動は単なる平和運動ではない。主権の問題だ」「水の問題を見ると、みじめさがわかるではないか」という内容のことを書かれています。

「主権」を奪われるということはどういうことなのか。ともすると堅苦しいイデオロギーの、遠い話になりがちですが、沖縄の人たちにとっては、生活の根幹と密接に結び付いた問題なんですよ。

(祖国復帰前は)今よりも厳しい状態にありました。沖縄の人たちは水道を止められ、遠くまで水を汲みに行かなければいけない。一方、米軍キャンプの中では、芝生にどんどん散水している。沖縄の人たちはそういう現実を目にしている。この矛盾はぜひ伝えたいと思いました。

瀬長亀次郎は、米軍統治下の沖縄で祖国復帰運動の中心的な人物のひとりで、沖縄返還後も衆議院議員として政治活動を続けた ©TBSテレビ

──統治する側と、される側の関係がリアルに伝わってくる。米軍が芝生に水をまいているという証言から、プールで暢気に泳ぐ姿まで浮かんでしまいました。水問題ひとつとってみても、占領下とはこういうことなのかと実感させられます。続編の特色は、沖縄の戦後史であるとともに、カメジローという人物とその家族の物語にもなっていますね。

よく、どうして2作目をつくられるのかと聞かれるんですが、1作目は亀次郎が那覇市長を追放されるまでを劇的な人生として描く、そこに米軍の弾圧があり、それと闘う姿が中心となり、その後の祖国復帰に至るシーンは駆け足になった感があったんですね。今回は、前作の空白の部分を埋めたいというのと、「もっともっと人間カメジローを見てみたい」という感想をいただいたこともあり、角度を変えて、もう1回日記を読み直してみたんです。

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