駒崎弘樹が壁に当たって学んだ政策の動かし方 その活動に「政策起業」の可能性が見えてくる

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船橋:つまり、省庁間の対立でもなんでも、使えるものはうまく使いながら、やりたいことを実現させればいいということですね。今は安倍一強と言われ、官邸の力が巨大になっていますが、官邸も使えるなら使ったほうがいいと、そういう発想もあるのですか。

駒崎:はい。モノによっては官邸の流れに乗せていくというのが大事だと思います。例えば、骨太の方針に入れてもらうというのは、とても有効な方法です。骨太の方針に入れるためには、その前段階の内閣官房が主宰する審議会に参加しなければならず、提案を実現するには、その審議会の議論をリードしているのは誰なのかを丁寧に見定めて、そのキーパーソンと意思疎通を図る必要があります。

ですから、テーマによって、議論の流れにどのように乗っていけばいいのかというようなことをマッピングして、対策を講じるというようなこともやっています。

日本最大のシンクタンクであるはずの霞が関の実態

船橋:お話を伺っていると、行政との付き合い方に、シンクタンクというか、「政策起業家」の可能性が見えてくるような気がします。そこで、その点についてもう少し深く伺いたいと思います。

話は少し戻りますが、病児保育のお話で、厚労省は国民にとっては最も身近で重要な政策を立案する機構だと思いますが、失礼な言い方になりますが、そこで働く行政官がそこまで無能なのかということに驚きました。そのあたりの駒崎さんの見方はどうですか。

駒崎:おっしゃるとおりで、ぼくも最初は、巷間で言われているとおり霞が関は日本最大のシンクタンクだと思っていました。でも、お付き合いしてみると、人事異動のサイクルが短く専門性を深める時間がないことに驚きました。しかも、ものすごく忙しいので現場に足を運ぶ時間もありません。

笑えない笑い話のようなこともあります。フローレンスでは医療ケアを必要とする子どもを預かる保育所も開設しています。医療的ケアというのは、呼吸器をつけないと呼吸ができないとか、口から食事を摂れないために鼻にチューブを入れて栄養を摂取しているとか、そういう状態のことです。

周産期医療の発達で、医療的デバイス(器具)の助けを借りて生きる子どもたちは10年前の2倍ほどに増えています。医療的デバイスを使っていると保育所も幼稚園も預かってくれません。ならウチでやろうと障害児保育園を立ち上げたんです。

それに伴い厚労省が先日、医療的ケア児の保育に関するガイドラインを作成したのですが、とんでもないチンプンカンプンのガイドラインだったために、現場がものすごく困ったということがありました。

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