駒崎弘樹が壁に当たって学んだ政策の動かし方 その活動に「政策起業」の可能性が見えてくる

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委員会で配られた資料に、次世代育成のためのさまざまな政策メニューが並んでいました。その中の1つに「アンパンマンショー」というのがあって、狙いは「子育ての楽しさを親に教える」と説明がありました。予算は数百万円でした。その委員会は行政の説明を穏やかに聞いて追認する儀式的な感じで、反対意見を述べるような雰囲気はなかったのですが、そんなのどう考えてもおかしいと思い、強く反対意見を述べました。

担当課長は「この若造が」って感じで、ぼくをにらみつけていました。言った後で、「まずい、これで仕事がなくなる」って後悔したんですけど、委員会が終わったら、別の課の課長さんが、「うちの区は縄張り意識が強く、口出しできないことになっているけど、おっしゃるとおりです。よく言ってくれました」と、肩をポンと叩いてくれたんです。アンパンマンショーは翌年になくなりました。

そのとき、「あ、そういうことか」と気づきました。最初は、市民委員会なんて儀式のようなものだと感じていましたが、そういう力学に対しても作用できる力があることを知ったんです。これからも、委員会や審議会といった行政の中に入り込んで、発言していこうと考えるようになりました。

うまく利用すればいいと学んだ

次に参加したのは、福田政権下の社会保障国民会議でした。そこでも学んだことがあります。会議のメンバーはみんな還暦過ぎの本当に偉い人ばかりで、ぼくだけが20代の若造で、緊張しながら参加していました。その会議で面白いことに気づいたんです。

事務局は厚生労働省だったのですが、経済産業省の方が「実は事務局の言っていることは違います」「こんなデータがあります」「どう思われますか。おかしいでしょ」って、言ってこられたんです。「え? どういうこと?」とびっくりしていると、「ぜひ、ご発言を」ということでした。

ぼくには、仲間であるはずの同じ政府の人が違うことを言っている意味がわからず、「政府って一緒なんじゃないですか」と尋ねました。すると、「違います。われわれと彼らでは志が違う」というようなことをはっきりと言われました。

で、なるほど、そういうことかと合点したんです。省庁は一枚岩とばかり思っていましたが、どうも違うようだ。同じ業界の会社でも、違いがあって利害の対立もある。だったら、言葉は悪いですが、取引をしてそれを利用すればよいのだということを学びました。

例えば、どちらかの意に沿った発言をする代わりに、欲しいデータをもらうとかそういうことです。ある種の審議会ハックみたいなテクニックを学んでいくことになりました。

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