駒崎弘樹が壁に当たって学んだ政策の動かし方 その活動に「政策起業」の可能性が見えてくる

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もう1つは、駒崎さんが、政策を志す若者たちのヒーローであることです。手前みそになりますが、私どものシンクタンクは、大学生のインターン先としてとても人気があります。彼らのほとんどは政策に関心があって、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)で働きたいと思って来てくれるのですが、彼らは駒崎さんの社会起業家としての取り組みに深い敬意を払っています。

社会の現場から課題を取り出して解決策を提示し、それを政策に反映して社会に広げていくという活動は、私たちが目指すシンクタンクの役割そのものです。私たちより1歩も2歩も先を行っている駒崎さんに政策起業家には何が必要なのか、政策起業力とは何か、を伺えればと思います。

駒崎 弘樹(以下、駒崎):実は、このお話をいただく直前に、船橋さんのご著書『シンクタンクとは何か――政策起業力の時代』を拝読していまして、その中に出てくる「政策起業家」という言葉に感銘を受けました。

すごくユニークというか、「ああ、そういう切り口があったのか」と合点し、今まで頭の中にモヤッとあった概念を表現するのにぴったりとした言葉をいただいたと思いました。ぼくたちが目指してきたのは「政策起業家」だったんですね。

船橋:まだ荒削りな概念で、私にもどのぐらいの射程距離があって、どれだけ深みのある言葉になるかわかりませんが、これからのあるべきシンクタンクの役割を表現するのに、なかでも日本の非営利、独立のシンクタンクの使命と役割を定義するうえで1つの問題提起をしてみようという思いで選んだ言葉です。

「社会の役に立つことをしたい」――訪問型病児保育

ではさっそく、「社会起業家」駒崎弘樹氏がどのようにして誕生したのか。その辺りからお話しくださいますか。

駒崎:ぼくは大学時代にITベンチャー企業を経営していました。ですが、IT企業の先輩方と話をすればするほど、自分の事業が誰のためのものかわからなくなりました。気づいたのは、「日本の社会の役に立つことをしたい」ということでしたが、選択肢として考えた政治家も官僚もボランティアも、自分のやりたいことではないと思いました。

それで行き着いたのが、事業によって社会の課題を解決する社会的企業です。2年間、ITベンチャーの経営に身を費やしてきた自分にこそできることだと思ったんです。

大学在学中、ベビーシッターをしていた母から、熱を出した子どもは誰も預かれない、という話を聞きました。子どもを預けられず、看病のために会社を休んだのが原因でクビになってしまう母親もいるというのです。そんなことはあっちゃいけないと思い、なんとか熱を出した子どもを預かれる仕組みを作ろうというところからスタートしたんです。

大学を卒業と同時にフローレンスの前身となる団体を立ち上げました。病児保育の施設を作って、行政からの補助金を頼りに運営するという一般的なやり方ではなく、施設を持たず補助金ももらわないで、ベビーシッターのような形で病気の子どもの家で保育する、訪問型の病児保育を立ち上げました。

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