農林中金の含み損はまだまだ拡大? 増資も毀損懸念

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出典:農林中央金庫 2009年3月期半期決算決算概要説明資料 10ページ

上記は農林中金の時価評価の仕方である。ブローカー時価や市場ベンダーから情報を入手したと資料にあるが、他の投資家はかなり異なる内容の数字の提示をブローカーから受けたとも聞く。
 
 ブローカーに聞けば、当然損が出るものを売ったとは言えないので、顧客に対しては有利な評価価格を出すインセンティブが働くのではないかと思われる。独立した客観的な評価機関などによる検証などが必要ではないか? と思うのは筆者だけではなかろう。 

JAバンクに迷惑をかけるべきではない!

自己資本の毀損をうけ、農林中金は、3月までに1兆円の資本調達をJAバンクから行うとしている。決算の内容とその後の市場の悪化の度合いから、調達した資本もすぐに毀損すると可能性が高いと指摘する金融関係者もいる。

あるJAバンクの支店長と話したが、農林中央金庫から資本調達に関する説明は聞いたことがないとのこと。資金の出し手であるJAバンクをヨソに、中央だけで判断しているようにうかがえる。

農林中金は、この甘めの決算数字に基づいて資本調達を行おうとしているが、筆者は、最終的にJAバンクにツケが回ることになるのではないか、と非常に懸念している。金融知識に乏しい農協に対して、増資のリスクの説明ができているのか、極めて不安だ。

同時に資本調達直後の決算において、さらなる減損に追い込まれ、資本が大きく毀損する可能性があることを関係者は認識しているのだろうか? 

損失の責任は誰に

2008年3月から2008年9月にかけて、サブプライム問題における損失懸念が明らかであったにも関わらず、農林中金は資産担保証券の残高をさらに1兆円以上、56%も積み増している。

また、特に円で調達した資金をドル転換し外債投資をしているので、為替差損も膨大な額になるのではと考えられるのだ。 

本来は安全な運用に当たられるべき農協資金。それをこの時期これだけの危険にさらした責任は一体だれがとるのか? 厳しく追及する必要があるはずだ。

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