金融機能強化法が復活、農水官僚が支配する農林中金の巨額損失救済の疑惑
「金融機能強化法案」の国会提出決定
10月24日に政府は「金融機能強化法案」を国会に提出することを閣議決定した。
金融機能強化法は、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」(2004年6月18日法律第128号)に基づいて2004年8月に成立し2008年3月末までの時限立法で、地方の金融機関の経営安定化を図るため、政府が金融機関に資本参加できるようにするものだ。
筆者は、本法の申請期限が切れた時点で、国会で本法の継続を主張した(4月23日の経済産業委員会)。しかしながら金融庁は必要ないとの回答をし、この国会でも同じ質問を行い、今回は「法制化を進める」との回答を得ることができた。
地方の金融機関が倒産すれば、地方の中小企業は連鎖倒産を免れない。この法律は金融機関のためではなく中小企業のために必要だと筆者は考えている。
多くの問題が!
政府の法案を聞くと、期限が切れた前の法律と大きく二点が変わる。
まず、資本参加(注入)を行う金融機関の経営者責任をほとんど問わなくなる(前法から経営責任の4条5項及び6項を削除)
そして、農林中央金庫というJAバンクの親玉も支援の対象に加えられる。
この二点が大きな問題だ。
我々の税金を使うので、間違った経営を行った経営者はやはりなんらかの責任を問わなければならない。当然、迅速な対応が必要ですので、「金融機関からの申請ベース」ではなく「政府がある程度強制的に資本を注入できる勧告権を持たせる」ことも検討が必要である。
また、農林中金に大きな問題がある。
農林中央金庫の問題
農林中央金庫は、農林中央金庫法という農水省の法律に基づき設立された金融機関で約1万店舗あるJAバンクの親銀行(※→関連記事:金融機能強化法で改めて問う、農林中央金庫の意義)である。
JAバンクが集めた約60兆円の資産を持っている。
出典:農林中央金庫ホームページ http://www.nochubank.or.jp/disclosure/index.shtml
この農林中央金庫の問題点として
【1】天下り
農林中央金庫のトップは歴代全て農水省の事務次官OB。また、役員にも農水省のOBが入っている。そしてこの役員の報酬は政府系機関(※→関連記事:金融機能強化法で改めて問う、農林中央金庫の意義)であるにもかかわらず公表されていない。
他の政府系機関はすべてなんらかの形で役員報酬を公開しているが、この農林中央金庫だけが役員報酬を公開していない(平成20年度で役員13人で4億3000万円とだけ公開本日口頭で公開され。単純計算でも一人3400万円。理事長は一億円近く貰っている可能性もある)。(※→関連記事:金融機能強化法で改めて問う、農林中央金庫の意義)
【2】貸し出しが異常に少ない
61兆円の資産(2008年3月時点)のうち、貸出しは9兆円、全体の16%しかない。つまり、農業や企業への資金提供にはあまり役に立っていない。(※→関連記事:金融機能強化法で改めて問う、農林中央金庫の意義)
ちなみに農林中央金庫の役割は法律上「農林水産業への資金の提供」である。本当にこの役割を果たしているのかはなはだ疑問である。
【3】有価証券に投資し過ぎ
一方で有価証券は36兆円の59%となっている。投資銀行のようになっている。すでに多額の損失が発生している。
この投資の失敗を税金で支えることが本当に必要なのか? 疑問である。
有価証券投信の中でも、特にリスクが高い債務担保証券の残高が2兆7170億円もあり、リーマンブラザーズ問題が起こる今年の6月末時点でさえも4329億円の損失を計上している。
現状でどこまで損失が膨れ上がっているか、まったく見えない状況だ。
これからこれらの問題が国会で議論されることとなろう。
是非、なし崩しの金融救済、特に農林中央金庫のどさくさにまぎれた救済は深い審議が必要である。
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