疑問! 農林中央金庫の経営情報開示めぐる政府の姿勢

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疑問! 農林中央金庫の経営情報開示めぐる政府の姿勢

民主党参議院議員・藤末健三

政府が農林中央金庫の役員報酬などに回答する立場にないとの回答

10月28日の記事「金融機能強化法で改めて問う、農林中央金庫の意義」で触れていたとおり、筆者は国会において「農林中央金庫の経営に関する質問主意書」(第一七〇回国会質問第七三号)を提出し、農林中央金庫の役員の報酬や再就職の状況についての質問したところ、そのに答弁書(内閣参質一七〇第七三号)を得た。

答弁書では「就任後の報酬額については、農林中央金庫が決定する事項であり、政府としてお答えする立場にない。」となっていた。しかしながら、筆者は法的に政府は経営情報を開示する立場にあると考えている。

筆者は、農林中金も金融機能強化法の対象とすべきであると考えているが、やはり役所と強い関係を持つ法人はその経営状況を一般の民間よりも広く公開すべきだと考えている。今回はその法的な裏づけについて明らかにしたい。

特別民間法人である農林中央金庫

農林中央金庫は農林中央金庫法に基づき設置された特別民間法人であり民間金融機関である。

同農林中央金庫法第八十一条第六項には「農林中央金庫は、第一項又は第二項に規定する事項のほか、預金者その他の顧客が農林中央金庫及びその子会社等の業務及び財産の状況を知るために参考となるべき事項の開示に努めなければならない。」とあるが、この開示対象に経営者の報酬が含まれるかどうか。非常に大事なところだ。

役員報酬については、別途に農林中央金庫定款(平成十一六年七月十一五日)にはおいて役員報酬の規定定款はなく。すべて経営管理委員会で決めることができるようになっている。このようなガバナンスでいいかどうかもこれから議論すべきであろう。

特別民間法人の情報開示を決めた閣議決定をどう見るか?

特別の法律により設立される民間法人については、所管大臣がその設立根拠法等に基づいて指導監督を行う場合には、平成14年4月26日に各省庁大臣が参加する閣議で決定され、平成18年8月15日に改定された 「特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準」http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/tokusyu/kantoku/index.htmlに沿って行うことが基本とされている。

そして、この指導監督基準では役員報酬についての「役員の報酬等(報酬及び退職金をいう。以下同じ。)は、当該法人の資産及び収支の状況並びに国家公務員の給与・退職手当や民間の役員の報酬等の水準と比べて不当に高額に過ぎることなく、社会一般の情勢に適合したものとなっていること。また、法人及び所管官庁において、その支給基準が一般の閲覧に供されるとともに、インターネットにより公表されていること。」と定めてなっている。

したがって、特別の法律により設置される民間法人である農林中央金庫の本閣議決定に所管大臣である農林水産大臣は、指導監督基準に基づき同農林中央金庫を指導監督する立場にあり、同金庫はそれに従う必要があると考えるが、農林中金は閣議決定に従ってない。

これもやはり問題だと筆者は考えている。

総務省の特別民間法人の調査に唯一応じない農林中金

また、総務省が平成十一九年十一月二十一日に公表した平成一八年度「特別の法律により設立される民間法人に関する指導監督の状況(平成十八年度)」http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/071121_1.htmlにおいて、も三十七法人の中で唯一農林中央金庫だけが、「役員報酬の支給基準が定められていること」、「役員報酬の支給基準がHPで公表されていること」などを含むすべての基準項目に対し、一切の情報を公開していない。

 これらの問題については政府に質問状を送っている。回答はおそらく11月21日となる。回答をまた報告したい。

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