トランプ政権が対中追加関税を決めた真の理由

中国の「合意破り」にアメリカが激怒した

背景にはトランプ氏ならではの交渉術があった(写真:AFP=時事)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は5月5日、中国からの輸入品2000億ドル相当(約22兆円)に対する10%の関税率を、5月10日から25%へ引き上げると宣言した。突然の発表に至った背景には、トランプ大統領ならではの交渉術があると、筆者は読んでいる。

中国はなぜ「米中合意」をひっくり返したのか

中国側は5月初旬、ここ数カ月の交渉で積み重ねてきた米中合意をひっくり返すような修正文書を突如としてホワイトハウスに送ってきた。この中国側の変節に対して、アメリカ側交渉チームの中心であるロバート・ライトハイザーUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)代表は激怒した。報告を受けたトランプ大統領は、電光石火で関税引き上げの声明を出したのだ。

今回の米中貿易交渉の前週の5月1日、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長の記者会見があった。これが中国側のトップ交渉者として訪米していた中国の劉鶴副首相による対米交渉戦術に影響を与えたと判断できる。

ポイントは2点。パウエル議長がトランプ政権からの政治的な利下げ圧力には屈しないと述べたこと。もう1つは、金利据え置き判断の材料として、米中貿易交渉について明るい展望を述べたことだ。

中国側は、このパウエル議長の記者会見を裏読みして、アメリカ国内には隙があり、この隙を突けば、米中貿易交渉を一発逆転できる、と読んだのかもしれない。パウエル議長が、米中貿易交渉の安定化を根拠の1つとして金利据え置きを決めたことから、アメリカは中国が無理を言っても米中貿易協定を締結するだろう、と踏んだわけである。

トランプ大統領の早業の決断で見て取れるのは、「中国がディール(合意)を破った」と一瞬にして見抜いたことだ。トランプ大統領は自身のツイートで、「中国が合意をひっくり返し、再交渉しようとする理由は、2020年のアメリカ大統領選挙に当選するのがジョー・バイデン氏のような(中国に甘い)人物だと夢見ている。アメリカから年間5000億ドルを今後も毎年、不公正に奪う気なのだろう」などと述べた。

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