北朝鮮の国連大使は5月21日、ニューヨーク国連本部で記者会見を開き、アメリカ当局による北朝鮮貨物船の差し押さえは、「違法で不当」とアメリカ批判を展開した。
そもそも、北朝鮮をめぐっては、いまや「核の横流し」が大きな問題になっている。にもかかわらず、石炭とはいえ、たかが不正輸出の問題を、このタイミングでわざわざ国連に持ち出してきた狙いは何か。それは国連を巻き込むことによって、米朝関係の緊迫化にガス抜きを図ろうとする外交手段の1つではないか、と筆者は分析している。
いま北朝鮮の金正恩労働党委員長が学ぶべきこと
ねじれにねじれた米朝関係を、北朝鮮自身が好転させる有力な方策としては、「核の全面放棄」以外にはない。北朝鮮は、その肝心な点をいまだに消化し、理解していない。それには、北朝鮮が仲介人と見立てていた、韓国の文在寅大統領自身が、「核の横流し」問題を正しく理解していなかったことも関係している。
ハノイ会談の決裂後、北朝鮮の韓国に対する批判は非常に強い。しかし、北朝鮮の金正恩労働党委員長にとって大事なのは、韓国の文大統領を批判することではなく、イラクのアメリカ大使館へのロケット弾テロによって、アメリカが対イラン開戦の直前まで一気に突っ込んだ、という危機状況に学ぶことである。
つまり、金正恩委員長が学ばなければならないのは、「核の横流し」によって、核兵器がイランやテロリストにわたる可能性と、そのことが、アメリカやヨーロッパを含む世界の最大危機を招くという「21世紀の現実」である。言い換えれば、北朝鮮が核大国になるという発想は、21世紀には実存しえない。21世紀は「核の冷戦の時代」ではなく、「テロの時代」だからだ。
ロシアのプーチン大統領や、中国の習近平国家主席も、その点を理解している。北朝鮮は、そのことを理解しないままで、4月25日のウラジオストク近郊で行われた露朝首脳会談に臨んだ。会談時の金正恩委員長の表情は硬く、会談後、北朝鮮代表団は予定されていたウラジオストクでの式典をキャンセルし、北朝鮮に帰国したと伝えられる。
それ自体、外交大国ロシアに対する外交上の非礼とみなされよう。メディアでも、そう解釈され、伝えられている。さらに、露中首脳会談のすぐあとに、北朝鮮は飛翔体実験を行った。5月4日と9日のことだ。
注目されるのは、北朝鮮が放ったロケット弾が、ロシア製の高性能弾道ミサイル「イスカンデル」に酷似していると報じられたことだ。ロシアから輸入したとの見方もあるが、そんな国連制裁の明白な違反を、外交大国のロシアが行うとは考えられない。旧ソ連圏の技術をまねた「北朝鮮製」というほうが、説得力があるだろう。
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