米中貿易摩擦、トランプ支持者の過激な「本音」

トランプ派メディアはこう報じている

トランプ政権で大統領戦略官も務めたスティーブ・バノンは「中国との妥協は無駄」と論じる(写真:Eric Vidal/ロイター)

沈静化していたように見えた米中貿易摩擦は、中国の態度に痺れを切らしたアメリカの追加関税措置の発表で、一挙に緊迫した。米中両国だけでなく、世界経済全般への悪影響が懸念される。今秋の消費税増税を控えた日本経済は、不安定な立場に追い込まれた。

アメリカのトランプ大統領は「アメリカ経済は非常に力強い。中国はそうではない。われわれは強い立場にある」と述べ、対中国貿易交渉で関税による脅しを使うチキンゲームから降りそうにもない。単なるチキンゲームなのか。それどころでない可能性もある。

アメリカの利害を脅かすのはロシアではない

大統領がどう動くかは、2020年大統領選をにらんで、何を考えているかにもかかっている。大統領選の動向を左右するのは、共和党支持者の8割にも及ぶとされるトランプ支持者であり、彼らの考え方を左右するトランプ派メディアの論調だろう。では、トランプ派メディアは、激化する米中貿易摩擦をどう見ているか。意外と単純ではない。分裂していると言ってもよい。

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典型的なトランプの対中国政策支持派の議論は、次のようなものだ。トランプ派の論壇サイト『アメリカン・シンカー』に5月16日付で掲載されたオピニオン「トランプの対中国冷戦」。筆者はロサンゼルスの不動産会社の経営者で、イギリスの保守系シンクタンクで研究員でもあるアレクサンダー・マーコフスキー氏。同氏は現状を大枠で次のように見る。

「アメリカの利害を脅かすのはもはやロシアではない。ロシアのGDPはアメリカの10分の1にすぎない。この20~30年、中国は巨大な経済力と強化された軍事力でアメリカに対する地政学的敵対者として振る舞うようになった。経済力・技術力・軍事力いずれをとってもアメリカにはるかに劣るのに、平然とアメリカに心理的圧力をかけている。それは歴代アメリカ政権がだらしなかった(feeble)からだ。だが、トランプの登場で米中関係は新たな時代に入った。戦略的潮流を反転させ、今後数世代にわたって中国の歴史を後退させる。これは貿易戦争ではない。冷戦なのだ」。

世界最大のアメリカ経済はいまや好調だ。貿易は重要だが、経済成長のカギではない。他方、中国は貿易に国家の存在をかけている。中国製品に高関税をかければ、アメリカの法人税の低さと相まって、製造拠点を中国に持つアメリカ企業がベトナムなどに移転するだけでなく、アメリカにも戻ってくる。アメリカが勝ち、中国が負ける。交渉が長引けば長引くほど、この傾向が強まり、いったん撤退した企業は戻らないだろう。それこそまさにトランプの究極の狙いだ。収入を奪い中国を弱体化させるのだ。

こうした意見と、「アメリカ経済は非常に力強いが、中国はそうでない。われわれは強い立場にある」というトランプの発言は響き合っている。

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