これに対しても、保守系メディアから懸念の声が上がっている。『ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)』紙は16日付の記事で「ファーウェイへの輸出制限で痛みを感じるのはシリコンバレーだ」と訴え、同社が世界に広げた部品主要調達先92社のうち33社はアメリカ企業で、地元中国の25社を上回り、昨年の部品調達700億ドルのうちアメリカ製部品が110億ドルに及ぶと警告した。
このように、新興トランプ派メディアの一部や、WSJのような伝統的保守派メディアから、トランプの対中貿易交渉姿勢については不安や懸念の声が上がっている。が、それを打ち消すように、関税こそが「偉大なアメリカ」をつくってきたし、これからもつくる、と主張するのが政治評論家パット・ブキャナンだ。
「アメリカ・ファースト」の先駆者
ブキャナンはトランプに先立ち4半世紀前に「アメリカ・ファースト」を唱えて、経済においては保護主義、安全保障では自国第一の孤立主義を訴え、冷戦直後の1992年大統領選に打って出た。ブキャナンの「アメリカ・ファースト」は共和党予備選を揺るがし、当時の父ブッシュ大統領が本選挙で敗北する原因のひとつとなった。トランプは2016年大統領選でブキャナンの戦術を模倣し、それが時代にぴたりとはまった。
そのブキャナンは保守系誌『クロニクルズ』への14日付の寄稿で、関税は結局、アメリカの消費者が支払うはめになるという主張に対し、「だが、それで話は終わるわけでない」と応じる。それなら、中国製品を買わずに他国製品かアメリカ製を買えばいい。中国製品が売れなくなり、中国経済に打撃を与えることができる。アメリカに輸出したい企業は中国から撤退すればいい。
ブキャナンはアメリカの建国以来の関税の歴史を説いて、トランプ支持者らに訴える。関税で商工業者と労働者を守ってきたからこそ、共和党は偉大な政党になった。合衆国憲法が発効(1788年)し連邦議会が2番目に通した法律は、憲法起草者の1人で初代財務長官となったハミルトン起草の「1789年関税法」である。初代ワシントン大統領が署名し発効した。1812年からの米英戦争後、マディソン大統領の下で発効した「1816年関税法」こそ、イギリス製品を締め出し、アメリカの繁栄をもたらした。
それだけでない、とブキャナンは続ける。リンカーン大統領は南北戦争の戦費を関税でまかない、1920年代の大繁栄は所得減税を関税で埋め合わせた結果だ。大恐慌の原因はスムート・ホーリー関税法(1930年)だというが、ニューヨーク株式市場の大暴落は1929年に起きている。大恐慌の原因は、その後の通貨供給の失敗だ……。
こうして関税の歴史を大急ぎでたどって、ブキャナンは言う。「関税こそ、アメリカを偉大な国にした税金だ」。「メイク・アメリカ・グレイト(アメリカを偉大に)」というトランプのスローガンと関税を結びつける。
さらに、19世紀前半のイギリス、同後半のドイツ、1914年までのアメリカ、戦後日本、さらに近年の中国まで引き合いに出し、みな関税による「経済ナショナリズム」で経済大国になったと論じ、自由貿易で没落したイギリスの轍を踏むな、と警告する。トランプの関税引き上げによる対中圧力を全面的に支持する論調だ。
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