廃刊に追い込まれた保守系オピニオン誌の雄
1990年代半ば以来、アメリカの保守派メディアをリードしてきたオピニオン誌『ウィークリー・スタンダード』が昨年12月半ば、廃刊となった。廃刊に追い込まれたといってよい。ネオコン(新保守主義者)の代表的論客ウィリアム・クリストルらが1995年に創刊、以来、ネオコン路線の牽引車となり、2001年の9・11テロの後の対イラク開戦を主導する論陣を張った。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの保守論壇のリーダーだった。
それが瞬く間に尾羽打ち枯らす姿になったのは、トランプ政権誕生以降だ。2016年大統領選でクリストルを中心とするネオコン主流派は「反トランプ路線」を牽引した。自由と民主主義拡大のために対外軍事介入もいとわないネオコンと、「アメリカ第一」の保護主義と対外非介入のトランプ路線が水と油なのは歴然だ。
FOXテレビのように大統領選、とくに予備選挙中にはトランプと対立しながら、政権が誕生するとさっさと寝返った保守系メディアと違い、『ウィークリー・スタンダード』は反トランプの気骨を見せ続けた。
しかし、FOXのように寝返ったのはメディアだけでない。選挙中は反トランプだった連邦議会の共和党議員も、共和党支持者の8割が熱狂的にトランプを支持するのを見て次々とトランプの軍門に下った。
『ウィークリー・スタンダード』も、保守系メディア王ルパート・マードックから同誌を10年前に買い取ったコロラド州のメディア企業が、最盛時から半減した販売部数低下を理由に廃刊を決めた。代わって、親トランプの論陣で勢いを増す傘下の新興週刊誌『ワシントン・イグザミナー』に資金を回すという。これも風向きを見ての転向だ。
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