一方、JAGの後継としては政治ブログ・サイト『アメリカン・グレイトネス』が発足、親トランプ派の論客たちが論陣を張り続けている。
JAG時代のもう1人の論客マイケル・アントンは、トランプ大統領就任とともに政権の国家安全保障会議に高官として迎え入れられたが、激しい人事抗争の中で昨年4月に退任。トランプ政権の人材供給源のひとつとなっているヒルズデール大学(ミシガン州)が首都ワシントンに持つ政策研究所に加わり、親トランプの高級論壇誌『クレアモント・レビュー・オブ・ブックス(CRB)』に頻繁に寄稿して、思想論争を仕掛けている。
CRBを発行するのはロサンゼルス郊外のクレアモント・マッケナ大学に付属するクレアモント研究所だ。同大学は戦後アメリカ保守思想に大きな影響を与えた亡命ユダヤ人政治思想家レオ・シュトラウスが一時、また経営学のピーター・ドラッカーが長く教えた名門校である。CRBはいまや、親トランプの高級メディアとして注目されており、発行部数も急激に伸ばしている。
アメリカの政治や外交に変化の兆しも
繰り返すが、アメリカでは現在、保守派メディアの再編が起きている。冒頭に挙げた『ウィークリー・スタンダード』のような、これまで保守政権に多大な影響力を持った論壇誌がつぶれ、新興の『アメリカン・アフェアーズ』や、いままで隠れたような存在だったCRBのような論壇誌が、注目を浴びている。
保守派メディアとして影響力を振るってきたFOXテレビや、伝統的保守派雑誌『ナショナル・レビュー』も、一種の転向を遂げてトランプにすり寄っている。これら旧来の保守メディア大御所は、かつてはトランプを「保守」とは認めていなかったが、いまはトランプ支持者らに見捨てられるのを恐れている。
こうした再編だけでない。オンライン・メディアの影響力が増し、トランプ政権の『ブライトバート・ニュース』や、白人至上主義者も連なるオルタナ右翼系メディアなどが力を振るうようになってきた。オンライン・メディアは、これまで論壇誌や新聞から排除されてきた特異な論客らに、これまでにない発言力を与えている。こうした再編の結果、アメリカの社会思想が変貌し、アメリカの政治や外交に大きな変化の兆しが出てきている。
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