アメリカが心酔する「新ナショナリズム」の中身

保守主義の「ガラガラポン」が起きている

トランプ大統領の登場に伴って、保守主義の理念も変化が起きつつある(写真:CARLOS BARRIA/ロイター)

今度のスローガンは「アメリカをつねに偉大に(Keep America Great)」だという。アメリカのドナルド・トランプ大統領が6月18日再選出馬を宣言した。共和党内の支持率は9割近くに達し、同党の大統領候補選びでは対抗馬はまだ出そうにない。仮に再選で敗れたとしても、共和党内での大きな影響力は続くだろう。だとすれば、この数十年間、共和党の屋台骨をつくってきたアメリカ保守主義はどうなるのか――。

「トランピズム」の核心

自由貿易や小さな政府といった、アメリカ保守主義の中核的な理念について、トランプ大統領は重視していない。自由貿易を核として進むグローバリゼーションに対しては敵視さえしている。自由貿易と並んで、冷戦後期以来、アメリカ保守主義外交の中心的テーマであった民主化の拡大、つまりネオコン(新保守主義者)路線にも否定的だ。

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自由貿易に代わって保護主義、他国の民主化などより「アメリカ・ファースト」で非介入路線。これが、トランピズム(トランプ主義)の核心だ。

そうなった背景は、トランプが疲弊した白人労働者階級をターゲットにして、彼らの力を借りて綱渡りのように中西部のラストベルト(錆びた工業地帯)の各州を勝ち取り、大統領ポストを手にしたからだ。

逆に、そのように勝利したことで、ラストベルトの白人労働者の不安や不満への対処を共和党の政策から切り離すことはできなくなり、そうした政策を支える理念が必要になった。つまり、新しい時代状況と政策に沿い、それらを主導していくための思想の模索が始まった。保守思想再編への動きである。

本連載の第1回で取り上げたように、そうした再編は保守派メディアの変革という形で表面化している(『日本人が知らない「トランプ派メディア」の本質』)。今回はメディア変革の裏側で起きている思想再編に、さらに焦点を当ててみる。

第1回ではネオコン論壇の旗艦のような雑誌であった『ウィークリー・スタンダード』の廃刊について触れた。それ以前に、ネオコン論壇誌では内政専門誌『パブリック・インタレスト』が2005年には廃刊し、外交専門誌『ナショナル・インタレスト』は現実主義外交系シンクタンクに買い取られた。

残るネオコン系主要誌は『コメンタリー』だけとなった。アフガン・イラク戦争の長期化に加えてリーマン危機にさらされたアメリカ国民の徒労感や挫折感が、論壇状況を変えてきた。トランプはそうした思想環境を背景に出てきたことは第1回で説明したとおりである。

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