アメリカが心酔する「新ナショナリズム」の中身 保守主義の「ガラガラポン」が起きている

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新たに出現したトランプ派メディアなどを舞台に、一部の知識人グループがトランプ登場を歴史的機会と捉え、保守思想を組み替え、新たな思想運動を起こそうとしている。ここに来て、そのが形が徐々に見え始めた。きっかけとなったのは、保守派ケーブルテレビ、FOXニュースの人気政治コメンテーター、タッカー・カールソンのこの1月の発言だ。

カールソンは、6月20日にトランプ大統領がイラン軍事攻撃を直前で中止した際に、大統領に大きな影響を与えた人物と見られている。トランプは個人的にしばしば助言を仰ぎ、カールソンはイランと戦争を始めることには強く反対してきていた。

労働者層を踏み台にするエリートという構図

そのカールソンは1月初め、市場経済とアメリカの「家族」の問題について、次のようなことを番組の中で長々と「独り言」として述べた。

「アメリカでは今や、結婚は金持ちしかできない。そんなことでいいのか。半世紀前には、結婚や家族生活において階級格差などほとんどなかった。1960年代後半から、貧困層が結婚できなくなった。1980年代には労働者階級のかなりの部分でそうなってきた。18~55歳の貧困層では26%、労働者階級では36%しか結婚していない」

労働者階級の子どもを見ると、半分近く(45%)が14歳までに両親の離婚に直面している。さらに婚外子、家庭崩壊などが激しく増加している。中間層以上の裕福な家庭では56%の成人が結婚しており、離婚率もずっと低い。どうしてか。

市場経済がなすがままにする連邦政府の誤った政策が、労働者階級の「家族生活」の経済的・社会的・文化的基盤を台無しにしている。カールソンはそう批判した。製造業の働き口がなくなり、高卒以下の労働者の賃金が下がり続け、結婚もできず、家庭は崩壊し、薬物・アルコール濫用、犯罪増加につながっている、と指摘した。

富裕層のエリートたちは労働者を踏み台にして、脱工業化経済の中で繁栄を享受しているのに労働者の苦境に見て見ぬふりをしている。「すさまじい怠慢ぶり」だ、とカールソンが激しく批判した。

共和党だけでなく民主党も同罪だと述べ、大きな問題は、アメリカ保守思想の一方の核である「市場」が、もう1つの核である「家族」を破壊しているということだ、と論じた。「家族の価値」を重んじる保守派による資本主義批判という点が注目される。

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